アメリカのトランプ政権は、中国との貿易問題をめぐり、中断している交渉を近く再開する見通しです。髙橋解説委員です。
Q1)
けさのイラスト、どうしてトランプ大統領が天秤棒を担いでいる?
A1)
中国の習近平国家主席との先の首脳会談で、いわば“ふたつのディール”があったとトランプ大統領は言うからです。ひとつは、中国の通信機器大手ファーウェイに対する制裁措置の一部緩和です。「安全保障に影響しない製品に限ってアメリカから輸出を容認する」と言うのです。もうひとつは、その見返りとなる農産物の輸出拡大です。「中国は途方もない量をすぐにでもアメリカから買うだろう」そうトランプ大統領は言います。ただ、中国側はそうした“ディール”の存在自体を公式に確認していません。アメリカ側も議会には賛否両論があるようです。
Q2)
なぜアメリカ議会の賛否は分かれている?
A2)
いまのアメリカ議会には、とりわけハイテクや安全保障分野で、中国に厳しい見方をする議員が大勢います。現に与党・共和党の有力議員らは野党・民主党とも協力し「制裁をむしろ強化する法案を検討する」と言っています。再選をかけた選挙を来年に控えて、トランプ大統領は、与党議員らの離反を防ぐためにも、そうした強硬な意見を無視はできないでしょう。
その一方で、共和党内には、中国との貿易問題の早期決着を求める議員もいます。大豆やトウモロコシなどを中国に輸出する中西部の各州などから選出された議員らです。そうした農業の盛んな州は、トランプ大統領の支持基盤でもありますから、中国に融和的な意見もまた無視できないのです。天秤のバランスをうまく取らないと、大統領は前に進めず、ひっくり返ってしまうかも知れません。
Q3)
すると中国との交渉も中々難しそうですね?
A3)
米中双方は、きのう(9日)交渉再開に向けて閣僚レベルの電話協議を行いました。ことし5月に交渉が物別れになって以来、双方の基本的な立場は隔たったままですから、今後の交渉は難航も予想されています。はたして中国との最終合意はいつ得られるか?それまでトランプ大統領は天秤棒を担いだままかも知れません。
(髙橋 祐介 解説委員)
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