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「欧州首脳人事ようやく決着?」(ここに注目!)

二村 伸  解説委員

今年秋に任期満了となるEU・ヨーロッパ連合の次期首脳の人事が、先週ブリュッセルで開かれたEU首脳会議でまとまりました。しかし、この決定に反発も上がっています。

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Q.EUの次期首脳人事はまだ決着してないのですか。

難航した人事は先週、EU首脳会議でようやく合意に達したのですが、EUの顔でもあるヨーロッパ委員長のポストをめぐって紛糾しています。委員長に指名されたのは、ドイツのフォンデアライエン国防相です。7人の子どもの母親で、メルケル政権で14年間閣僚を務め、首相の後継者とも目された人物です。また、ECB・ヨーロッパ中央銀行総裁は、フランス出身のラガルドIMF専務理事で、独仏の2人の女性がEUの行政とユーロ圏の金融政策を担う重要なポストに指名されました。EUのトゥスク大統領は、男女2人ずつの指名を「完璧だ」と自画自賛しましたが、就任まですんなりとはいきそうにないんです。

Q.なぜ揉めているのですか?

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各国の思惑に加えヨーロッパ議会が強く反発しているためです。ヨーロッパ議会の選挙では各会派が委員長候補を立てて争い、前回は最大会派から委員長が選ばれましたが、今回は最大会派の中道右派の候補にフランスのマクロン大統領がノーを突きつけました。このため、独仏など一部首脳の協議で中道左派が推す今の副委員長をあてることでいったん話がまとまりました。大阪のG20サミット中のことで、「寿司ディール」と呼ばれました。
ところが、独仏主導の決定に旧東欧諸国が異を唱え、ディールは成立しませんでした。そこで首脳会議でフォンデアライエン国防相起用のサプライズ人事となったのですが、今度は中道左派勢力が反発し、ヨーロッパ議会でも議会軽視だと批判の声が上がっています。来週行われる議会の投票で過半数の支持が得られるか、予断を許しません。

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Q.まだ波乱もあり得るのですね。

はい。まさに今のEUを象徴しています。EUは分極化が進み、5月の選挙では中道右派と左派の2大勢力が初めて過半数を割り込むなど、求心力が低下しています。難題が山積するEUのかじ取り役を初めて女性が担うことになるのか、人事をめぐる駆け引きが暫く続きそうです。

(二村 伸 解説委員)


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