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「対韓国 輸出優遇見直しの波紋」(ここに注目!)

神子田 章博  解説委員

日本政府が韓国に対し、一部の化学製品の輸出の優遇措置を安全保障上の理由から見直したことで、経済界などに波紋が広がっています。
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Q 日本の投げたブーメランが跳ね返ってくるということですか?
A そのおそれがあります。今回優遇措置を見直すのは、有機ELディスプレーの製造に使われる化学製品など3品目です。韓国はこれらの品目の7割から9割を日本から調達していて、日本からの輸出が滞ると、有機ELディスプレーや半導体の生産ができなくなるおそれがある。そうなると、日本メーカーは有機ELパネルの全量を韓国から輸入していますので、有機EL画面のテレビやスマートフォンがつくれなくなる可能性があるというわけです。
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Q なるほど、なぜそうした措置をとったのでしょうか。
A 実はこの3品目は、軍事転用が可能なことから、もともと輸出を厳格に管理する必要がありますが、安全保障上の友好国などには、輸出が簡単になる優遇措置を与えていました。ところが韓国については「いわゆる徴用をめぐる問題で信頼関係が著しく損なわれ、お互いの信頼のもとでの輸出管理が困難になった」ことに加え、不適切な事例も見つかっているなどとして、個別の輸出契約ごとに90日程度をかけて審査することにしたんです。
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Q それは韓国への対抗措置ということですか?
A 日本政府は、そういうことではない。手続きを厳格にするだけのことで、WTO・世界貿易機関のルールにも違反しないとしています。ただ背景に外交上の問題があったとはしており、外交問題の解決のために貿易制限措置を使ったという受け止めもひろがっています。日本の経済界からは、「これをきっかけに両国の話し合いが始まれば」という期待の声が聴かれる一方、韓国政府は、さきの大阪G20サミットで各国が合意した自由貿易の精神に反するとして、措置の撤回を求めています。韓国側が報復措置をとれば、米中関係のように報復合戦になりかねないと懸念する声も出ています。日韓両国の経済にも大きな影響を与えかねないだけに、今後事態がどう動いていくのか注目していく必要があります。
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(神子田 章博 解説委員)

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