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「米朝『ペンフレンドの恋の行方』は!?」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

アメリカのトランプ大統領は、G20出席や北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長との会談など、一連の外遊を終えて帰国し、通常の執務を再開しました。髙橋解説委員です。
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Q1)
ホワイトハウスに戻ったトランプ大統領。随分ご機嫌のようですね?
A1)
ひと眼あったその日からキム委員長と「互いに恋に落ちた」と言うトランプ大統領。現職のアメリカ大統領として初めて軍事境界線を跨いだプロモーションビデオまで作成しご満悦のようです。実際ツイッターで会談に意欲を見せた翌日パンムンジョムで握手が実現したのも、ふたりがこれまで何度も手紙のやり取りを続けてきたからこそ出来た演出でしょう。いわば“ペンフレンド外交”がつないだサプライズ会談。米朝協議が膠着している今だからこそ『会いたくなるのは必然』だというのです。

Q2)
今後の米朝交渉では、何が焦点になるでしょうか?
A2)
当面は、実務協議をいつ再開できるかです。アメリカ側は、今月半ばにも協議に入りたいとして、ビーガン特別代表が北朝鮮側から誰が交渉の席に就くかを待っています。実務レベルで双方の主張の隔たりを埋めておかないと、ことし2月のハノイでの首脳会談が物別れに終わった二の轍を踏むことになりかねからです。その上で、次の焦点となるのは、北朝鮮の非核化への道筋をつけられるかどうかです。

Q3)
でも北朝鮮側は“制裁緩和”も求めているのですよね?
A3)
トランプ大統領は「制裁は維持する」としながらも、「制裁をかけ続けるのは好きではない」「次はキム委員長をホワイトハウスに招きたい」と、発言がやや前のめり気味です。ことしのノーベル平和賞を本気で狙っていると言うよりも、自らの再選キャンペーンで米朝の融和を歴史的業績としてアピールするためでしょう。しかし、非核化への道筋もない現状で“制裁緩和”に応じれば、今回のサプライズ会談も単なる政治ショーに過ぎなかったと批判を免れません。はたして非核化交渉を軌道に乗せることは出来るのか?『ペンフレンドのふたりの恋』は前途多難。手紙で交わした『言葉だけが頼みの綱』かも知れませんね。

(髙橋 祐介 解説委員)


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