「進む?認知症対策 大綱決定」(ここに注目!)
2019年06月18日 (火)
堀家 春野 解説委員
今後の認知症対策の指針となる政府の初めての「大綱」が策定されました。大綱をめぐっては予防についての数値目標が取り下げられるなど紆余曲折があったようです。
堀家春野解説委員です。
Q)。厚生労働省にパンチが打ち込まれていますね。
A)。はい。5月に公表した大綱の案に盛り込まれていた数値目標に懸念の声が寄せられたんです。「70代での発症を10年間で1歳遅らせる」というものです。認知症の本人や家族から「予防できず認知症になった人が落ちこぼれのようにとらえられる」といった懸念。そして、専門家からも認知症の予防法が十分に確立されていない中での数値目標の設定に疑問が呈されたんです
Q)。それで、数値目標を取り下げたんですね。
A)。はい。根本厚生労働大臣は記者会見で、予防の取り組みを進めるにあたっては認知症の人の尊厳を守りともに生きる「共生」の基盤の上で進めることが大前提だと説明しました。
認知症は、2025年には65歳以上の5人に1人を占めると推計されていて、誰にとっても人ごとではありません。ですが、対策を進めるのはそう簡単ではありません。世界的には認知症のリスクを減らし予防を進めていこうという流れですが、どのような運動や活動が効果的なのか十分にはわかっていません。日本は高齢化先進国の強みをいかし、効果的な予防法を確立する必要があると思います。
Q)。そして、認知症の人が増えていきますから共生も大切ですね。
A)。それが最も重要な点です。大綱をきっかけに根本的な治療法や予防法の確立はもちろん認知症になった人が抱えている生きづらさを無くしていかなければなりません。
Q)。生きづらさ、ですか。
A)。実は認知症になって外出の機会が減ったという人およそ7割を占めるというデータもあります。駅で迷ったり買い物が難しくなったりしたというのがその理由です。
こうした生きづらさを無くし、認知症とともに生きる「共生」社会を実現できるのか注目したいと思います。
(堀家 春野 解説委員)
この委員の記事一覧はこちら
堀家 春野 解説委員