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「続くか 中国強気の交渉姿勢」(ここに注目!)

神子田 章博  解説委員

アメリカと中国の経済摩擦が続く中、消費や生産など中国の景気の状況を示す主要な統計がきょう発表されます。

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Q 神子田さん、この統計になぜ注目しているんですか?

A それは、今後の中国政府のアメリカとの交渉姿勢に影響を及ぼす可能性があるからです。米中の協議は、先月にはいって急転直下暗礁に乗り上げたのですが、その背景には、今年1月から3月の中国の経済成長率が一年ぶりに下げ止まったため、中国政府が、足もとの経済状況は大丈夫だということで強気の交渉姿勢に転じ、対立が深まったというのです。しかし、4月は、消費の勢いを表す小売り売上高の伸び率がおよそ16年ぶりの低い水準となったほか、工業生産の伸びも大幅に鈍りました。きょう発表される5月の消費や生産の数字が悪ければ、貿易摩擦の影響が一段と深刻化しているということになります。

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Q そうなりますと、中国はアメリカとどう対峙するのでしょうか?

A 中国政府はアメリカの要求には決して屈しない姿勢を強調しています。国有企業による補助金をやめることなど、国の体制の根幹にかかわる要求をつきつけてられているからです。こうしたなかで習主席は先月下旬、中国共産党が当時の国民党との内戦に勝利する転換点としている「長征」の出発点を訪れ「新たな長征が始まった」と国民に呼びかけました。

Q それにはどういう意味があるんですか?

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A この長征というのは、共産党軍が実に1万2500キロを徒歩で行軍したことを指すわけですが、その故事になぞらえてアメリカとの経済摩擦も長期戦でのぞむ姿勢を示したものだと受け止められています。ただ長期の行軍には十分な食料が必要なように、経済摩擦を長期間戦うにも、自国の経済がしっかりしていなければ、民衆の不満が高まり、足元がふらつくことになります。トランプ大統領は大阪G20サミットの際に、習主席との会談を求めていますが、中国側がこれに応じるかどうか、応じたとしてもどれだけ強気な交渉姿勢でのぞむのか。経済の状況も考慮しながらの判断となるだけに、きょう発表される統計の数字に注目したいと思います。

(神子田 章博 解説委員)

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