中央アジアのカザフスタンで大統領選挙があり現職のトカエフ大統領が当選し、12日、就任式が行われました。大統領は親離れするのでしょうか?
石川一洋解説委員です。
Q大統領の親離れとは?
Aカザフスタンは、北にロシア、東に中国に挟まれた中央アジアの大国で、地域の安定にとって死活的に重要な国です。そのカザフスタンを1989年以来、率いてきたのがこの方、ナザルバーエフ前大統領、お父さんと言われる存在です。今年の三月、78歳という年齢を理由に任期途中で大統領職を退き、忠実な側近の上院議長のトカエフ氏に大統領職を譲りました。今回の選挙はいわば息子のトカエフ氏への権力の移譲を国民が承認するのか、移譲に伴い政治に変化があるかどうかつまり“親・ナザルバーエフ離れ”が選挙の焦点となりました。70%の支持を得て当選したトカエフ氏は就任式で国の安定と国民の合意を重視するナザルバーエフ路線の継続を表明しました。
Q親離れできたのですか?
A後ろで前大統領が手綱を握り続け、実質的な院政の開始ともみられています。実はナザルバーエフ氏はすでに初代大統領として特別の地位を占めることが法律で定められています。そしてさらに国のリーダー「ナショナルリーダー」の称号も得ています。ナザルバーエフ体制は国の安定と資源大国して経済成長をもたらしましたが、汚職や親族支配の弊害も目立っており、変化を求める声も選挙をきっかけに表面化しています。
Q抗議行動が続いていますね?
A結果だけ見ると圧勝ですが、実質的には野党の候補者を締め出した茶番の選挙だとして投票日同日、各地で抗議行動が行われ全国で700人以上が拘束される事態となっています。トカエフ大統領は公正さを重視すると一定の変化も示唆していますが、こうした国民の声にどう応えるのかが大きな課題です。
Qカザフスタンはどこに向かうのですか?
Aナザルバーエフ氏には健康不安もあり、院政も永遠に続けるわけにはいきません。ポストナザルバーエフに向けて徐々にではあっても変化に踏み切るのか、それとも国民の不満を抑圧していくのか、分かれ道に立っています。
(石川 一洋 解説委員)
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