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「国民投票法改正案の成立困難 背景は」(ここに注目!)

権藤 敏範  解説委員

国会の会期末まで残り2週間となりましたが、衆参両院の憲法審査会の開催のメドはたたず、国民投票法改正案の成立は、極めて難しい情勢となりました。権藤解説委員です。

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Q)この絵は、料理を冷蔵庫にしまうところですか?
A)はい。去年から、2度にわたって継続審議となっている国民投票法の改正案という料理は、今の国会でも成立、つまり完成は難しいということで、冷蔵庫に三度しまわれようとしているところです。

Q)この料理、美味しくないということですか?
A)いいえ。この改正案は、国民投票の利便性を高めようと、一般の選挙と同じような投票の仕組みにするためのもので、もともと野党の多くにも不満はなかったのです。

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ただ、自民党は、改正案の成立後、審査会で、「自衛隊の明記」など4項目の条文案を提示し、メインディッシュの憲法改正の議論に入りたいと考えていました。
これに対し、野党側は、自民党ペースで改憲論議が進むことを警戒し、国民民主党が、政党によるテレビ広告の規制を盛り込んだ、別の改正案を国会に提出して、あわせて審議するよう強く求めたのです。

Q)それで、なぜ、議論は進まないのですか?
A)参議院選挙を控えていることも背景にあります。
与党側は、改正案を速やかに成立させたい。しかし、議論が進まなければ、それは野党の責任だということを、選挙で、国民にアピールすればいいという考えです。
一方の野党側は、選挙前の成立で、与党の得点になることは防ぎたい。仮に、強行採決となれば、与党の強引さをアピールすればいいという訳です。

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Q)与野党ともに、思惑がらみですね・・・
A)関係者からは、「与党が衆参で3分の2を占める今は、『丁寧に』という影に傲慢さが透けて見え、野党も必要以上に警戒して、議論にならない」という声も聞かれます。
改正案の審議は、次の国会以降に持ち越されそうですが、選挙の後に、与野党がどのような構図になっているのか、それによって、文字通り、丁寧な議論を行う環境が整うのか、注目したいと思います。

(権藤 敏範 解説委員)


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