アメリカのトランプ大統領は、不法移民対策を理由に10日からメキシコに対して実施を警告していた関税の上乗せ措置を見送ることを明らかにしました。髙橋解説委員です。
Q1)
けさのイラストは、トランプ大統領が江戸の町火消し?
A1)
自分がマッチでつけた火を自分がポンプで消し止める。いわば自作自演で注目や賞賛を浴びようとする行為は俗に「マッチポンプ」と言われます。毎月10万人もの不法移民の流入に業を煮やし国家非常事態も宣言したトランプ大統領。移民らが経由する隣国メキシコによる対策が不十分との理由から、すべてのメキシコ製品に関税を毎月、上乗せしていく措置を警告していましたが、先週末、両国による協議の結果、この措置を「無期限に延期する」ことを明らかにしました。関税を梃子に譲歩を迫り、みずからの手腕で危機を回避できたとアピールする。これをトランプ流の「マッチポンプ」と言ったら、ちょっと言いすぎでしょうか。
Q2)
メキシコ側はどのような譲歩に応じたのですか?
A2)
両国の共同宣言は、▼メキシコが南部のグアテマラとの国境に治安部隊を優先的に配置して「前例のない措置」で流入をくい止める、▼一方のアメリカは難民申請のため入国してきた移民をメキシコに送り還し、審査の期間中はメキシコが就労なども支援することを柱にしています。一見メキシコ側の一方的な譲歩のようにも見えますが、メキシコによる提案で中米地域の発展に向けた両国の支援協力も明記されたことから、いわば「名を捨てて実をとる」。喧嘩腰を控えたロペスオブラドール大統領の作戦勝ちという見方もあります。
Q3)
では、不法移民問題も解決に向かうでしょうか?
A3)
まだわかりません。このままアメリカへの不法入国者が減らなければ、どんなに経済への悪影響が懸念されても、ふたたび関税が俎上に上ってくる可能性は残るからです。現に、中国との貿易摩擦は今、関税の報復合戦がエスカレート。トランプ大統領は、関税を梃子に使った交渉手法にためらいは無さそうです。そのうち火を消すつもりが、周りの家にも燃え移り、火消しの手には負えなくなることが心配ですね。
(髙橋 祐介 解説委員)
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