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「米英首脳会談『英国紳士は傘をささない』?」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

イギリスを国賓として初めて訪問しているアメリカのトランプ大統領は、近く退陣する意向を明らかにしているメイ首相と、きょう(4日)首脳会談を行います。

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Q1)
けさのイラストは、どうしてトランプ大統領は傘をさしているのに、メイ首相はずぶ濡れなのですか?
A1)
天候と同じぐらい政局が目まぐるしく変わりやすい昨今のイギリスのこと。メイ首相がEUというテントから一歩外に出ようとした途端、「離脱協定案」という名の傘が飛んで行ってしまったからです。現にメイ首相は、EUからの離脱に七転八倒の末、みずからの方針に支持をまとめ切れず、すでに辞意を表明しています。ファッションに人一倍こだわりのあるメイ首相ですから、こんな姿で首脳会談に臨むのは、決して本意ではなかったでしょう。トランプ大統領が国賓として初めてのイギリス訪問を終えるその2日後、メイ首相は今週末(7日)で保守党の党首を辞任し、後任が決まり次第、政権から退く意向です。

Q2)
そんなメイ首相にトランプ大統領は傘をさしかけてあげないのですか?
A2)
昨夜はエリザベス女王主催の晩さん会で手厚いもてなしを受け、ご機嫌な様子のトランプ大統領。「アメリカとイギリスの特別な関係に揺らぎはない」として、EU離脱後のイギリスとFTA=自由貿易協定を結ぶことにも意欲を隠しません。しかし、その前提となるイギリスのEUからの離脱については、「合意なき離脱」を主張するジョンソン前外相や、離脱党のファラージ党首ら“強硬派”に公然と肩入れし、「EU側が譲歩しないならイギリスは交渉を打ち切るべきだ」と発言。「内政干渉だ」とまたまた物議を醸しています。

Q3)
するとイギリスのEU離脱問題で、トランプ大統領には仲介は期待できない?
A3)
難しいでしょう。アメリカファーストを掲げるトランプ大統領は、同盟国イギリスにも、自国優先主義を推奨しているからです。はたしてイギリスの次期首相は、「離脱協定」の傘もないままEUから飛び出す事態を回避できるのか?
「英国紳士は傘をささない」そう言われる都市伝説は、もしかすると本当になるかも知れません。                 

(髙橋 祐介 解説委員)


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