世界のエネルギーが集中するペルシャ湾の周辺で、イランとアメリカなどの緊張が高まる中、関係国が活発な外交を繰り広げています。
出川解説委員です。
Q1:
アメリカのトランプ大統領が、イランに対する圧力を強めていますね。
A1:
はい。 イラストにありますように、アメリカのトランプ政権は、イランに対する経済制裁を強化するとともに、ペルシャ湾周辺に、原子力空母や爆撃機を配備して、経済と軍事の両面から圧力を強めています。イランのロウハニ政権が、これに強く反発する中、先月半ば、ペルシャ湾の入口、ホルムズ海峡の近くで、サウジアラビアのタンカーなどが、何者かの攻撃を受けました。さらに、サウジアラビアのパイプラインも無人機による攻撃を受けました。イラン政府は、否定していますが、サウジアラビアとアメリカは、イランの関与があったと非難しています。
Q2:
緊張は高まる一方なのでしょうか。
A2:
そうとは言い切れません。わずかながら、緊張を和らげる発言もあるからです。
先週、日本を訪問したトランプ大統領が、安倍総理との会談後、「私は、イランの体制の転換は目指さない。イランが対話する用意があれば、そうしたい」と述べ、注目されました。
これに対し、イランの最高指導者ハメネイ師は、「アメリカとの対話は拒否する」と述べていますが、これとは別に、イラン政府は、「もし、アメリカが制裁を停止すれば、対話の道も開ける」と言うメッセージを、周辺国に託したと伝えられています。また、イランのザリーフ外相が、日本など友好国を立て続けに訪問し、局面の打開を目指しています。これを受けて、安倍総理が、今月半ば、イランを訪問する見通しです。
Q3:
こうした外交活動は、事態打開につながるでしょうか。
A3:
楽観はできません。まず、トランプ政権が、イランへの制裁を停止するとは思えません。
また、サウジアラビアなどアラブ諸国は、先週末、首脳会議を開いて、イランが中東地域を不安定化させているとして、共同で対抗する方針を示しています。根深い不信感があるだけに、緊張がそう簡単に解消するとは考えられません。
ただ、いずれの国も、戦争は望んでいません。偶発的に軍事衝突が起きることが最も心配で、それを未然に防ぐための仲介外交が、今、何よりも求められます。
(出川 展恒 解説委員)
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