新型インフルエンザ対策について検討する国の有識者会議が、2019年5月23日、開かれます。新型インフルエンザ対策とその課題について考えます。
Q:新型インフルエンザといいますと、2009年に感染が広がりました。再び起こるということなのでしょうか?
A:ちょうど10年前の2009年5月は、日本にも新型インフルエンザのウイルスが入ってきたことが確認され、混乱や不安が続いたのを記憶している人も多いと思います。
新型インフルエンザは、明治より前からありました。年表にあるように、明治以降10年から40年くらいの間隔で繰り返されています。いつ起きるかわからない次の新型インフルエンザに備えることが必要です。
Q:被害はどれくらいになると考えられるのでしょうか?
A:2009年のときの日本の被害は、およそ200人が死亡し、2000万人以上が感染したとみられています。
このときは、ウイルスの毒性が比較的弱かったことや、多くの人が、早めに医療機関を受診したことなどから、こうした規模だったといわれています。
一方、次の新型インフルエンザについて、国の被害想定があります。17万人から64万人が死亡し、3200万人つまり国民の4人に1人が感染するというものです。
Q:なぜ、被害想定の死亡する人の数がこれほど多くなっているのでしょうか?
A:次の新型インフルエンザは、毒性が強いウイルスなのではないかと心配されています。被害が想定より小さくなる可能性はありますが、1900年代など過去の状況をみると、これくらいを想定しておく必要があるのです。
Q:そうなると、十分な対策が必要になりますね。
A:国は、治療薬の備蓄やワクチンの製造体制の強化を進めています。
さらに、対策の方針を示した「政府行動計画」を作成し、それを踏まえた医療機関、企業、家庭などそれぞれの対策を具体的に示した「ガイドライン」を作りました。
ただ、感染が広がると仕事を休む人が、一時的に最大40%くらいになるとされています。
例えば、運送業や交通機関は人手を確保できず混乱することも考えられます。さらに、住民を支える自治体までもが職員が足りなくなれば、ガイドラインなどで示された対策も十分機能しなくなる恐れがあります。
対策は実効性のあるものにしなければなりません。本当にそうなっているのか。
10年の節目に有識者会議などの場で対策を点検し、必要な見直しを進めることが求められます。
(中村 幸司 解説委員)
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