政府の公式な景気認識を示す今月の月例経済報告がきょう発表されます。
Q 額縁のなかの文字は「回復」とありますが?
A 月例経済報告では、先月まで、「緩やかに回復している」という景気判断が維持されてきました。実際に、今週発表された今年1月から3月のGDP国内総生産もプラス2.1%と、2期つづけてのプラス成長となりましたが、国内需要の柱となる個人消費と設備投資がいずれもマイナスでしたし、また先月の貿易統計では輸出が5か月連続で前年割れとなりました。
Q そうしたなかで「悪化」という文字を持っている人も見えますね?
A はい。実は先週発表された3月の景気動向指数では、2か月ぶりに指数が低下したことで、景気の基調判断が、景気が後退している可能性を示す「悪化」に下方修正されました。これは米中貿易摩擦の影響で自動車や部品、半導体製造装置などの生産が減少したことによるものです。ただ、この景気動向指数の景気判断は、直近の三か月の指標から得られるデータをもとに機械的に決まるものです。一方、月例経済報告は、安倍総理大臣や日銀の黒田総裁らが出席する「関係閣僚会議」で、海外経済のデータも盛り込んだ資料に基づいて総合的な判断が下されます。
Q どのような判断となりそうでしょうか?
A 政府は雇用や所得環境が改善していることや、企業収益も高い水準が続いていることから、「国内の需要は底堅い」という認識を変えていません。ただ個人消費をめぐっては、消費者心理を示す指数が先月まで7か月連続で悪化するなど「伸び悩み」も指摘されています。さらにアメリカと中国の貿易摩擦も、ますます激しくなる様相を見せていて、日本経済への悪影響がさらに広がっていくことも考えられます。
先月の報告では景気は「ゆるやかに回復している」とする一方で、「輸出や生産の一部に弱さもみられる」という但し書きがついていましたが、こうした表現が変わるのかどうか。変わるとしたらどう変わるのか、政府の景気判断は、10月に予定されている消費税率の引き上げの是非をめぐる議論にも影響を与えることになるだけに、注目されます。
(神子田 章博 解説委員)
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