「イラスト解説・ここに注目!」です。スリランカで、キリスト教の教会や、高級ホテルを狙った連続自爆テロで、日本人の女性1人を含む250人以上が犠牲になった事件から、きょうで1か月です。事件はスリランカ社会に深い傷あとを残しています。出川解説委員です。
Q1:
「深い傷あと」、どういうことですか。
A1:
イラストにもありますように、スリランカでは、異なる宗教間の対立が深まり、社会が分断されようとしています。捜査当局は、国内のイスラム過激派組織による犯行と断定しました。事件を受けて、多数派の仏教徒や、テロの標的となったキリスト教徒の間に、少数派のイスラム教徒を敵視する感情が広がっています。イスラム教のモスクや、イスラム教徒が経営する店が襲撃されたり、放火されたりする事件が相次いでいるのです。ほとんどのイスラム教徒は、テロとは無関係で、嘆かわしいことです。
Q2:
テロ事件の背景や動機は、どこまでわかったのでしょうか。
A2:
国内のイスラム過激派組織の犯行と見られていますが、過激派組織IS・イスラミックステートの名で犯行声明が出されるなど、地元組織とISに、何らかのつながりがあるのは確実です。しかし、誰がテロを計画し指示したのか、誰が武器や資金を調達したのかなど、詳細はまだ解明されていません。再発を防ぐためにも、真相究明が急がれます。
Q3:
社会の分断、どうすれば良いでしょうか。
A3:
とにかく、異なる宗教間の対立が、暴力の応酬にならないよう、政府も、宗教指導者も、鎮静化に向け、あらゆる手を講じる必要があります。スリランカでは、26年に及び、7万人以上の犠牲者を出した激しい内戦が、ちょうど10年前の5月、終結しました。これは、少数派でヒンズー教徒のタミル人の武装組織が、分離独立を求め、仏教徒が主導する政府軍と戦ったものです。内戦終結後、外国からの観光客や進出企業が大幅に増え、スリランカの経済は、順調に成長していました。テロ事件をきっかけに、再び暴力が日常化する事態だけは、何としても避けなければなりません。
Q4:
そして、これは、スリランカに限った問題ではありませんね。
A4:
その通りです。3月にはニュージーランドで、男が2か所のモスクで銃を乱射し、51人が犠牲になる事件が起きています。宗教や民族の違いを理由にしたテロや暴力が、世界のどこで起きても不思議でない時代です。こうした事件が連鎖的に広がるのを防ぐための対策を、国際社会が連携して、早急に立てる必要があると思います。
(出川 展恒 解説委員)
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