ウクライナで20日、コメディアンのゼレンスキー氏が新大統領に就任します。
石川解説委員に聞きます。
Q コメディアンの大統領、いよいよ就任ですね。
A ウクライナ丸に新キャプテンとして乗り込むゼレンスキー氏、現職の大統領を得票率73%対24%という歴史的な大差で圧勝しての船出です。この73%の支持がゼレンスキー氏の力です。学生時代に仲間とコメディグループを立ち上げ、それをテレビドラマから映画まで手広く制作する有力プロダクションにまで育て上げました。この経営手腕を、政治の刷新に活かしてほしいと期待は大きいです。
Q とは言え政治経験無しの大統領ですね。
A 「大きな顔するな」と行く手を阻むのは議会です。ウクライナでは安全保障や外交は大統領の専権事項ですが、経済を取り仕切る首相は議会の多数派から選ばれます。今、ゼレンスキー氏は議会には全く足場がありません。既存政治の打破を掲げて支持をえたゼレンスキー氏ですが、まず議会でどのように多数派を得るのか最初の難関です。
Q 新大統領、どうしますか。
A ここ一週間で既存の政治勢力との決戦に踏み切るのか決断しなければなりません。
今月27日を過ぎると議会の任期が半年を切り、憲法の規定で議会を解散できなくなります。新大統領は自らが大統領役を務めた人気テレビドラマ「国民のしもべ」の名前を付けた新たな政党を組織しており、現在支持率はトップ。解散のカードを切るのか、最初の決断となります。そして次の難関がこの人です。
Q プーチン大統領・・・・
A ロシアにクリミアを併合され、東部の一部地域は親ロシア派が支配しています。ウクライナとロシアはドイツ、フランスの仲介で停戦とその後の和平で合意しています。停戦は一応実行されていますが、和平については、親ロシア派の地域に特別な地位を与えるなど厳しい条件がついていて、実行できません。
最新の世論調査では70%以上の人が和平を達成するためにロシアと直接交渉することを支持しています。しかし相手はプーチン大統領。妥協すれば民族主義者を中心に強い反発が予想されます。大統領の資質が問われる場面が就任直後から続くことになります。
キャプテン・ゼレンスキー試練の船出です。
(石川 一洋 解説委員)
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