イランの「核合意」をめぐって、ペルシャ湾を舞台に、アメリカとイランの軍事的緊張が急速に高まっています。出川解説委員です。
Q1:
アメリカのトランプ大統領とイランのロウハニ大統領が、激しくにらみ合っていますね。
A1:
はい。ペルシャ湾の入口、ホルムズ海峡の波が高まっています。12日、ここに向かっていたサウジアラビアの2隻のタンカーなど、合わせて4隻の船が、何者かの攻撃を受け、損傷する事件が起きたのです。ホルムズ海峡はエネルギーの大動脈で、日本にとっても、ゆゆしき状況です。
Q2:
誰のしわざですか。
A2:
まだ、わかりません。ただ、アメリカ国内では、イランの関与を疑う見方が出ています。イランは、サウジアラビアと対立を深め、「革命防衛隊」の司令官が、先月、ホルムズ海峡を封鎖する可能性をほのめかしていたからです。しかし、イランは関与を強く否定し、関与を示す証拠も出ていません。
Q3:
これほど軍事的緊張が高まったのはなぜですか。
A3:
アメリカのトランプ政権が、今月、イランの原油輸出を対象にした経済制裁を強化したのを受けて、イランのロウハニ大統領は、先週、核合意の一部の義務に従わないとする「対抗措置」を表明しました。
これに対し、トランプ政権は、イランに対する追加制裁を打ち出すとともに、ペルシャ湾に、原子力空母などを向かわせています。さらに、爆撃機や迎撃ミサイルの部隊の派遣も決め、イランへの軍事的圧力を強めているからです。
Q4:
緊張を和らげる手立てはあるでしょうか。
A4:
カギを握るのは、ヨーロッパ諸国です。核合意に参加するイギリス、フランス、ドイツと、EU・ヨーロッパ連合が、アメリカに対し、自制を求めるとともに、イランに対し、核合意を完全に守るよう求めたのは、適切な対応だと思います。
より根本的な問題は、イランが核合意を守る見返りに、「経済的な恩恵」を得られるかどうかです。イランは制裁で経済が行き詰まり、「我慢の限界」だとして、ヨーロッパ諸国に貿易や投資を拡大するよう強く求めています。ヨーロッパ側としては、各国の企業が、アメリカの制裁を回避して、イランと取引できる条件を整備する必要があります。軍事的緊張を緩和し、核合意を維持できるかどうかは、そこにかかっています。
(出川 展恒 解説委員)
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