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「トルコ強権政治に綻び?」(ここに注目!)

二村 伸  解説委員

トルコのエルドアン大統領のお膝元であるイスタンブールで与党候補が敗北した市長選挙が無効とされて異例の再選挙となり、国内外で強い批判が上がっています。
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Q.選挙がやり直しですか?

トルコ最大都市のイスタンブールはエルドアン大統領の出身地で、自ら市長を務めたあとも与党系の政党がポストを維持してきたいわば大統領陣営の牙城です。今回も元首相の大物候補を立て、絶対に落とせない選挙だっただけに与党は敗北を受け入れず、野党候補が市長に就任した後も選挙で不正があったと主張していました。これを受けて選挙管理委員会は先週、選挙を無効とし、来月23日に投票をやり直すことを決めました。
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Q.なぜ無効となったのですか?

「投票所の立会人が公務員でなかった」というのがその理由です。これに対し野党側は、同時に行われた地方議会選挙は与党の勝利が認められ、市長選だけ無効にするのはおかしいと訴え、決定は大統領からの圧力に屈したもので、「民意を無視した独裁だ」と強く反発し、支持者が街頭に出て抗議しました。
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さらに去年の総選挙でも同じような不備がったとして総選挙もやり直すべきだと訴えています。選管の決定には与党内からも疑問の声が上がっているほか、ドイツやアメリカ政府も透明性に欠けるなどと批判的で、政治混乱への懸念からトルコの通貨リラは急落しました。

Q.再選挙はどうなるのでしょうか。

与党は引き締めを図るでしょうが、野党側が結束すれば再び勝利する可能性もあります。エルドアン政権への信任投票と位置づけられた統一地方選挙では首都アンカラをはじめ多くの都市で与党が敗北を喫し、イスタンブールで再び敗れるようなことがあれば大統領にとって大きな痛手となります。
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トルコは欧米諸国との関係が冷え切ったままで、大統領の強権的な手法への批判に加え、景気の落ち込みやインフレなど経済への不満が都市部を中心に強まっており、絶対的な権力を手にしてきたエルドアン大統領の求心力にかげりが見られ始めたという人もいます。中東の大国トルコは転換期に差し掛かったのか、再選挙に向けた熱い戦いが関心を呼びそうです。
(二村 伸 解説委員)


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