各国の株式市場にも大きな影響を与えている米中貿易交渉。その最終合意にむけた閣僚級の協議が9日からワシントンで行われます。神子田解説委員です。
Q トランプ劇場米中摩擦編とありますが、閣僚協議を前にしたトランプ発言がまたも、世界に衝撃を与えましたね?
A そうですね。トランプ政権は今週になって、中国からの2000億ドル相当の輸入品に対する関税の上乗せ分を、現在の10%から、今月10日には25%に引き上げる方針を表明しました。実際に引き上げが行われれば世界経済に深刻な打撃を与えることになります。きのうの東京市場の日経平均株価も、何も起きなければ令和への改元のご祝儀相場で値上がりへの期待が強かったのですが、米中協議の雲行きが一気に怪しくなったことで335円の値下がり。NY市場の株価も大幅に値下がりするなど、市場関係者は衝撃を受けています。
Q トランプ政権は交渉最終盤に来て、どうして関税の引き上げを打ち出したのか?
A 米中交渉では知的財産権の侵害や、国有企業に対する優遇策、さらに交渉の合意内容がきちんと実施されるかを検証する仕組みといった、中国側からすれば、国の体制の根幹にかかわる、あるいは、内政干渉となる微妙な問題が焦点となっています。両国は交渉を通じて、各分野の合意を積みあげてきましたが、アメリカ政府によると、ここへきて中国側がその積み上げたブロックを崩そうとしたということです。どの分野かはわかりませんが、いったん合意した内容に中国の保守派がNOといった可能性があります。
Q 交渉はこれからどうなりますか?
A アメリカはこのイラストが示すように中国ののど元に鋭いヤイバをつきつけることで譲歩を迫った形です。しかし、メンツを重んじる大国中国にとっては、逆に「降りるに降りれなくなる」。逆効果だという見方も出ています。10日の関税引き上げを前に、9日からは、劉鶴副首相らが訪米し閣僚協議に臨みますが、アメリカの要求にどのような回答を持っていくのか、それがトランプ大統領の納得のいくものとなり、関税の引き上げが土壇場で避けられることになるのか。世界の注目が集まることになります。
(神子田 章博 解説委員)
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