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「対応急げ!原発テロ対策施設」(ここに注目!)

水野 倫之  解説委員

原子力規制委員会は、テロ対策施設が新基準で定められた期限までに完成しない原発について、原則として運転を停止させる方針を決めた。すでに再稼働した9基の原発はいずれも施設の建設が間に合わない見通しで、今後多くの原発で運転が止まる可能性。この原発テロ対策施設の問題について水野倫之解説委員の解説。
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電力会社の中には厳しい判断と受け止めているところもあるが、規制委としては当然の対応をしたまで。
逆に運転認めるようなことがあれば、それこそ原発の安全性だけでなく
規制行政全体の信頼性に大きな疑問符が付くところだったので今回の判断は妥当。
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テロ対策施設は福島の事故を教訓にできた新基準で、設置が義務づけ。
航空機を衝突させるようなテロが起きても、
冷却を継続して放射性物質の大量放出が避けられるよう、
制御室やポンプなどを備えた施設を設置しなければ。
2001年の同時多発テロを受けてアメリカが作ったテロ対策を参考にした施設。
その設置には工事計画の審査終了から5年以内という期限あり。しかし再稼働した9基すべてで間に合わない可能性。

電力会社は「実際やってみると岩盤をくりぬくなど、工事が難しいことがわかったため」と説明。
確かにこれまで経験したことがない施設という面はあるが、
電力会社の見通しの甘さが露呈。
原発が止まれば国のエネルギー政策や電力会社の経営への影響も考えられるが、
原発の安全確保はほかの何よりも優先されなければならない。
電力会社には少しでも早く設置する努力が求められますが、
それ以前の問題として、安全に対する姿勢には疑問を抱かざるを得ない。
今回電力会社は、施設の機能を代替する具体策もないまま、
そろって規制委に対して設置期限の延長、運転継続を求めた。
しかし今回の施設は、福島の事故を教訓に、
考えられるすべてのリスクに対して備えようと設置が義務づけられたもの。
電力会社はあらためて福島の事故の教訓が何だったのかを考え、
安全最優先の姿勢を再確認し、対応を急がなければならない。
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