スリランカの最大都市コロンボを中心に、ホテルとキリスト教の教会で起きた同時爆破テロ事件では、これまでに290人が犠牲になり、日本人も1人が犠牲になりました。事件の背景について、出川解説委員です。
Q1:
スリランカ政府が、イスラム過激派組織による犯行の疑いが強いと見ているのはなぜでしょうか。
A1:
犯行声明が出ていませんので、まだ、断定はしていませんが、いくつかの理由から、イスラム過激派による組織的なテロと見ているようです。
まず、テロの標的です。キリスト教の復活祭の礼拝が行われていた教会が3か所、欧米人が多く宿泊する五つ星のホテルが3か所、これらが、ほぼ同時に爆破されたこと。そして、いずれもが、自爆テロと見られることです。一般的に、イスラム過激派は、自爆攻撃をすれば、「殉教者」として天国に行けると思い込んでいます。
7万人以上が犠牲になった内戦は10年前に終結したため、分離独立を目指す少数民族の武装組織が関与した可能性は薄いと判断したようです。
Q2:
スリランカでも、イスラム過激派が活動しているのでしょうか。
A2:
スリランカでは、仏教徒が、国民の70%を占め、イスラム教徒とキリスト教徒は、それぞれ10%未満です。イスラム過激派の活動が活発だったとは言えませんが、捜査当局は、今月9日、国内のイスラム過激派組織が、教会などを狙った自爆テロを計画しているという情報をつかみ、警戒を強めていた矢先でした。
さらに、過激派組織IS・イスラミックステートに参加していたスリランカ人が数十人いたという情報もあります。帰国したISのメンバーが犯行に関わった可能性や、内外の過激派組織が連携してテロを行った可能性もあると見ているようです。
Q3:
今後、どこに注目しますか。
A3:
何らかの強い動機に基づき、計画的に行われたテロですから、今後、犯行声明が出る可能性が高いと思います。
また、捜査当局は、事件後24人を拘束し、その多くが、国内のイスラム過激派組織のメンバーだと明らかにしました。取り調べで、具体的な情報がどこまで得られるかが注目されます。
今回の事件では、日本人も犠牲になりました。日本政府は、注意喚起していなかったスリランカで犠牲者が出たことを教訓に、日本人の安全を守るための情報や対策を、再点検する必要があると思います。
(出川 展恒 解説委員)
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