NHK 解説委員室

これまでの解説記事

「ウクライナ大統領選挙 なぜコメディアンが支持されるのか?」(ここに注目!)

石川 一洋  解説委員

ロシアとの対立が続くウクライナ大統領選挙の決選投票が21日に行われます。コメディアンのゼレンスキー氏がリードしています。石川解説委員に聞きます。

c190419_0.jpg

Q 両候補、リングで対決ですか?

A 大統領選挙、最大のイベント、ゼレンスキー候補とポロシェンコ候補の公開討論が、19日夜、7万人収容のサッカースタジアムで行われます。先月31日の第一回の投票で第一位のゼレンスキー氏は30%、第二位の現職ポロシェンコ大統領は16%弱。大きく差をつけてコメディアンのゼレンスキー候補、マイクを持って余裕の表情です。二人ともヨーロッパへの統合を唱える親欧米派ですが、第一回投票ではゼレンスキー氏は、25の州などのうち22でリードし、ポロシェンコ氏が、リードしたのは西部3州だけです。

c190419_2.jpg

Q 大統領苦戦ですね。

A  ウクライナは民族主義の強い西部とロシアと関係の深い東部と分断する傾向があり、今回はロシアに併合されたクリミアや親ロシア武装勢力と戦闘の続く東部の一部では投票が行われていません。ポロシェンコ氏はロシアとの対決を訴えて、国民の支持を得ようとしましたが、西部以外には支持の広がりは見られません。

Q コメディアンはなぜ支持されるのですか?

c190419_4.jpg

A ゼレンスキー氏は俳優としてロシア語を使い、東部での戦闘の中止を訴えました。東西など国の分断ではなく融和を訴えました。実はロシアへの感情の微妙な変化も追い風になりました。大きく減っていたロシアに親近感を持つ人の割合が去年から増加に転じ、2月には57%に達しています。紛争を止めてほしいという心情が表れています。反ロシア一辺倒のポロシェンコ氏はこうした変化を見誤ったのに対し、ゼレンスキー氏は国民感情の変化を巧みに捉え支持を広げたと言えます。ゼレンスキー氏は決選投票に残らなかった候補者の票も取り込み、むしろリードを広げています。

c190419_5.jpg

Q ポロシェンコ氏のチャンスはないでしょうか?

A 今日の討論会が逆転に向けた最後のチャンスです、ポロシェンコ大統領としては、ゼレンスキー氏の政治経験の無さなどを徹底して攻撃し、失言を引き出そうとするでしょう。
ただトークショーはお手の物のゼレンスキー氏が逆に大統領の失政を追及してノックダウンするのではとの見方もあり、地滑り的な勝利もありうる状況です。

(石川 一洋 解説委員)


この委員の記事一覧はこちら

石川 一洋  解説委員

キーワード

こちらもオススメ!