きのう(17日)投票が行われたインドネシアの大統領選挙について、現地のメディアは、民間の調査機関などによる一部の開票所の集計結果をもとに、現職のジョコ大統領の再選が確実との見通しを伝えています。髙橋解説委員です。
Q1)
けさのイラストは交通渋滞ですか?
A1)
中々進まないように見える渋滞でも、多くの場合クルマは着実に前に進んでいるものです。おそらくインドネシアの大統領選挙も同じです。公式な開票結果の発表はおよそ1か月も先に予定されていますが、現地のメディアや民間の調査機関が非公式に集計したサンプル調査では、現職のジョコ大統領は、軍の元最高幹部のプラボウォ候補を10ポイント近くリードしているため、再選は確実との見通しが伝えられているのです。
Q2)
ジョコ大統領が優勢な要因は何だったのでしょう?
A2)
親しみやすい庶民派をアピールしているジョコ大統領ですから、国民生活を向上させるための支援策や雇用対策、インフラの拡充などを訴えて、年率5%台の堅調な経済成長を維持してきた実績が評価されたのは確かでしょう。しかも、今回の選挙に間に合うように先月、首都ジャカルタにいわば見切り発車のかたちで開業に漕ぎ着けた地下鉄も“追い風”になりました。
Q3)
なぜ地下鉄がジョコ大統領の“追い風”になった?
A3)
世界最悪とも言われるジャカルタの渋滞や大気汚染を地下鉄の導入によって改善する。そうした構想自体は、私が現地に駐在していた10年前より、はるか以前からありました。しかし、実現への転機となったのは、ジョコ大統領がジャカルタ州知事だった当時、この計画を承認し着工したからです。日本も円借款を供与して、地震や洪水にも耐えられる設計や掘削工事、新型車両や自動改札機から運行の人材育成に至るまで、日系企業が文字どおり「オール・ジャパン」で支援に取り組んできました。ですから日本にとっては、いま発展途上の国々で進めている「質の高いインフラ投資」の成功例になるよう期待されています。今回開通した南北およそ15キロの区間の延長や新たな路線の建設もすでに計画されています。日本とインドネシアは地下鉄事業でも「ウィン・ウィン」の関係を築けるか?ジョコ大統領の手腕に今後も注目が集まることになりそうです。
(髙橋 祐介 解説委員)
この委員の記事一覧はこちら