日米両政府は、二国間の新たな貿易協定にむけた閣僚級の初会合を15日から二日間の日程でおこないます。
Q 神子田さん、新たな交渉、何が焦点なのでしょうか。
A 三つあります。まず農業分野。日本政府は、TPP=環太平洋パートナーシップ協定を超える幅の関税の引き下げはしないことでアメリカと合意していると説明していますが、パーデュー農務長官は、「TPPと同じかそれ以上の関税引き下げを求めたい」としていて、予断を許しません。そして、自動車については日本からアメリカへの輸入台数の制限を求めてくることも考えられます。さらに為替です。ムニューシン財務長官は先週末、日本からアメリカへの輸出がしやすくなる円安になるのを事実上けん制する「条項」を貿易協定に盛り込みたい考えを示しました。
Q アメリカ側のこの交渉に対する意気込みが伝わってきますね?
A ところがアメリカの目下の最大の関心は、中国との貿易交渉でしょう。トランプ大統領は、今月初めに行われた米中閣僚協議のあと、4週間程度で合意をめざす方針を示していて、交渉はいままさに大詰めにさしかかっているからです。ただ、米中交渉の結果は、日本にとっても他人ごとではないんです。
A アメリカは、中国と交渉する際に、関税のさらなる引き上げをちらつかせることで、交渉を有利に進めようとしてきました。中国から大幅な譲歩が得られれば、その手法に自信を深めて、日本にも同様なやり方で譲歩を迫る可能性が強まります。
実は、アメリカはいま自動車の関税を25%に引き上げることを検討しています。仮に引き上げることになっても、日本に対しては、貿易交渉が続いている間は適用しないことで合意していますが、逆に交渉が決裂すれば適用する可能性があるわけで、これが取引の材料に使われることも考えられます。トランプ大統領には、来年秋の大統領選挙を控え、貿易赤字の削減を有権者にアピールしたい事情があり、米中協議が終わり、照準が日本に向けられることになれば、交渉は厳しさを増していくことになるのではないでしょうか。
(神子田 章博 解説委員)
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