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「5G導入へ 安全保障リスクは」(ここに注目!)

津屋 尚  解説委員

次世代の通信規格5Gの導入に向けた動きが世界各地で本格化しています。
新たなサービスへの期待も大きい一方で、安全保障上のリスクも指摘されています。津屋解説委員です。

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Q:5Gをはさんで、米中が対立しているんですね。
A:はい。両者の対立は一層激しくなっています。
今の「4G」から「5G」になると、超高速であらゆるモノがインターネットにつながるようになり、スマホにとどまらず様々な分野で新たなサービスの可能性が広がります。しかし、5G技術で世界のトップランナーである中国のファーウェイをアメリカは問題視していて、国内からの排除を狙った法律までつくりました。

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Q:なぜそこまでするんですか?
A:次世代の産業のけん引役にもなる5Gの覇権を中国に握られたくない。そして何より、ファーウェイ製品を通じて、安全保障に関わる情報が抜き取られるのではないかと、疑いの目を向けているからです。
中国には情報機関への協力を義務付ける法律がある他、ファーウェイのCEOは中国共産党員ですから、政府からスパイ活動への協力を要請されたら断れないだろうと専門家も見ています。
これまで大掛かりな通信傍受をしてきたのはアメリカ自身。あらゆるものにつながる5Gの導入をきっかけに情報収集の主導権を奪われるのではという危機感もあるのだと思います。

Q:アメリカは、世界にも排除を呼びかけていますね。
A:しかし今のところ、成果はあがっていません。同盟国の間でも、オーストラリアと日本は事実上排除に動いていていますが、一部に容認する国も出ていて、足並みはそろっていません。安全保障も大事だけど、5Gの事業で出遅れたくないというのが各国の本音かもしれません。

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Q:今後はどうなりますか?
A:冒頭でふれたアメリカの法律によって、来年8月から、ファーウェイ製品を使っている企業は外国企業も含めてアメリカ政府との契約から排除されます。今から来年にかけては5Gをスタートさせる国が相次ぎますので、今後、各国の政府や企業にどのような動きが出てくるかも注目です。

(津屋 尚 解説委員)
  


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