ヨーロッパとの合流を目指すウクライナの大統領選挙で、人気俳優が自ら主役を務めたテレビドラマを追い風に現職の大統領らを抑えて世論調査でトップを走っています。
石川解説委員です。
Q どんなドラマなのですか?
A ドラマの題名は「国民の僕」
ドラマでは、中学の歴史教師が国の腐敗に怒りを爆発させる様子がSNSに投稿され、大人気となり、大統領に当選、政治経験の全くない元教師の大統領と友人のグループが「国民の僕」として、既存の政治勢力とそれを支配する財閥に対して戦いを進めるというストーリーです。
ドラマで主役を演じた俳優ゼレンスキー氏が大統領選挙に実際に立候補して台風の目となっています。ゼレンスキー氏が世論調査では27.7%の支持を集めてリードしています。
Q 政治経験の無い俳優が支持される背景は
A ウクライナでは汚職が蔓延し、既存の政治勢力への不満が国民の間に強いのです。ゼレンスキー氏は腐敗した政治体制と決別し、「私はドラマ同様国民の僕になる」と訴えています。政治経験の無さを逆にプラスとしています。
Q ゼレンスキー氏を追いかけるのは?
A 現職のポロシェンコ大統領と大統領の政敵で元首相のティモシェンコ氏が16%台で二位を激しく争っています。31日の投票でどの候補も当選に必要な過半数の得票を集めるのは困難で、上位二人による決選投票となる見通しです。ゼレンスキー氏に続いてどちらが第二位となるのかが焦点です。
現職のポロシェンコ大統領は、愛国主義に訴えていますが、腐敗した既存の政治勢力の代表と位置付けられ苦戦です。
Q テレビドラマが選挙宣伝となっていないのですか?
A 実は今週、主演ドラマの新シリーズの放送が始まりました。ドラマを放送するテレビ局は反ポロシェンコの財閥が所有しており、財閥との決別を訴えるゼレンスキー氏こそ財閥の操り人形との批判も出ています。
有力候補はすべてヨーロッパとの合流を目指すとしていてその点で違いはありません。しかし蔓延する汚職体質と決別し、ヨーロッパへの道を歩めるのか、状況は混迷を深めています。
(石川 一洋 解説委員)
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