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「医師の働き方改革 患者への影響は?」(ここに注目!)

堀家 春野  解説委員

医師の働き方改革をめぐる議論が大詰めを迎えています。
医師の働く時間が短くなると患者に影響は出るのでしょうか。

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Q)イラストでは厚生労働省から病院に医師の働き方改革のメニューが
差し出されていますね。

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A)医師の残業時間はどこまで認められるのか。1年7ヶ月にわたって議論を続けてきた国の検討会が報告書をまとめます。この中では救急などを担う病院の医師については例外的に年間1860時間、月の平均に換算して155時間まで認めるという案が示されています。これは、過労死ラインを大きく上回ります。

Q)なぜ、こうした例外が設けられるんですか。

A)医師の長時間労働に頼っている現状を急には変えられないということだと思います。
ただ、このままでは医師が疲弊し、医療そのものが立ち行かなくなってしまいます。
医師への残業規制の導入は5年後ですが、この間にも労働時間を短くする対策を行っていかなければなりません。

Q)具体的にはどうやって短くするんでしょうか。

A)実は、患者側にとっても無関係ではないんです。医師の働き方を変えるには、私たちの働き方も見直す必要があります。仕事が休めないからと重い症状ではないのに夜間や休日に救急を受診するといった、医療のかかり方を見直すことも必要だと思います。
そして、医療の構造自体の変革も迫られているんです。

Q)医療構造の変革、どういうことですか。

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A)新しいメニューで示されているのが、タスク・シフティング、つまり看護師など医師以外の職種に仕事を移していくことです。医師でなくても担える業務、例えば、手術後の患者の管理などが想定されています。そして、地域に点在している、救急を担う病院を集約化することです。医師の数を集めると患者の受け入れを増やすことができますし、一人当たりの負担も減ります。患者にとっては病院が遠くなることもあるかもしれませんが、いざという時に“たらい回し”が無くなり安心につながるという面もあります。
医師の働き方改革を進めるには、医療側、患者側双方が変わる必要があると思います。

(堀家 春野 解説委員)


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