アメリカのバー司法長官は、3年前の大統領選挙をめぐるロシア疑惑をモラー特別検察官が捜査してきた結果、当時のトランプ陣営とロシアの間に“共謀関係”は認められなかったことを明らかにしました。髙橋解説委員です。
Q1)
ついに“モラー報告書”の概要が明らかになったのですね?
A1)
「ロシア疑惑は事実無根」そう訴えてきたトランプ大統領に有利な結果となったのは確かです。けさも先日と同様クイズ番組に喩えたイラストをご用意しました。
ポイントとなる質問はふたつありました。ひとつは、当時のトランプ陣営とロシアに“共謀関係”があったかなかったか?もうひとつは、大統領が捜査を違法に阻む“司法妨害”があったかなかったか?回答席に座ったバー司法長官は、モラー特別検察官が捜査報告書の中で、“共謀関係”については「認められなかった」つまりシロと判定したことを明らかにしました。もうひとつの“司法妨害”について、報告書は明確な判断を示さず、いわば“グレーの回答”でしたが、バー司法長官は「証拠不十分」との理由から、こちらもシロと判定したのです。トランプ大統領は「完全な潔白が証明された」と言っています。
Q2)
なぜモラー特別検察官は“司法妨害”には判断を示さなかった?
A2)
現職の大統領を司法機関が訴追できるかどうかは専門家の間でも意見が分かれていますし、トランプ大統領に対する直接の事情聴取が結局実現できなかったこともあったのでしょう。野党民主党もこの“司法妨害”について「疑惑はまだ晴れていない」と主張し、捜査結果の全面開示を求めて徹底追及を続ける構えです。ただ、そうした追及によって、政局が再び混乱する可能性はありますが、逆にトランプ大統領の再選に向けて、追い風が吹く可能性もあります。
Q3)
どうしてですか?
A3)
ロシア疑惑の捜査はこれにて終了し、「新たな訴追は勧告しない」と報告書には明記されていますし、仮に捜査結果の詳しい中身が今後明らかになったとしても、結論部分が変わるとは考えにくいからです。民主党が議会に舞台を移して攻勢を強めれば、与党共和党もまた結束を固めることになるでしょう。両者の攻防は、来年の大統領選挙の争点となり、最終的な決着は、有権者による審判が出るまで持ち越すかも知れません。
(髙橋 祐介 解説委員)
この委員の記事一覧はこちら