5年前、クーデターで実権を握った軍部が政権に居座り続けるタイで、民政復帰に向けた総選挙が24日行われます。
Q.久々の選挙は熱い戦いのようですね。
政権の座をかけた戦いは、タイの国技ムエタイのように最終ラウンドまで激しい打ち合いとなっています。左が軍部の後押しを受けるプラユット首相、右が13年前のクーデターで国を追われたタクシン元首相を支持するタイ貢献党の首相候補、スダラット元保健相です。
プラユット首相は、軍部が影響力を維持するために立ち上げた政党「国民国家の力党」の首相候補で、5年間の実績と知名度を武器に民政復帰後も引き続き政権を担おうとしています。一方のスダラット氏は、タクシン氏やその妹のインラック前首相のような人気や知名度こそありませんが、根強いタクシン人気をバックに政権奪還をめざしています。
Q.この絵の兵士は何をしているのですか?
軍部はあの手この手でタクシン派の勝利を阻もうとしているのです。ルールも人事も軍が押さえているのです。タイでは2001年以降の4回の総選挙はすべてタクシン派の政党が圧勝しましたが、そのつど解散させられたりクーデターで政権をつぶされたりしてきました。それでも厚い支持を得ているため軍政はタクシン派が単独で過半数の議席を獲得できないように選挙制度を変えた他、憲法を改正して上院の250人全員を軍部の任命制とし、上院議員も首相指名選挙に参加できるようにしました。軍に近い政党は下院の過半数がとれなくても首相のポストを得ることができるのです。民主主義には程遠い制度で、選挙も再三先延ばしし、国民の批判も高まっていました。
Q.選挙はどうなりそうですか?
世論調査ではタイ貢献党がトップですが、過半数には届かない見通しで、プラユット首相の党も単独での政権は困難です。そこでこの2党に続く反タクシン派の民主党と反軍政の新未来党の2党が連立の鍵を握りそうです。
タイは日本の企業にとってアジアの生産・輸出拠点で、5千を超える日系企業が進出しています。企業にとっても重要な政治の安定と民主化につながるのか、8年ぶりの総選挙に注目が集まっています。
(二村 伸 解説委員)
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