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「地下鉄サリン事件24年 これからの課題は」(ここに注目!)

清永 聡  解説委員

オウム真理教による地下鉄サリン事件から20日で24年になります。13人が死亡、6300人が被害を受けた事件。時間が経過した中で、これからの課題は何でしょうか。

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Q:地下鉄サリン事件から、もう24年になるんですね。
A:毎年この日、地下鉄・霞ヶ関駅には献花台が設けられます。事件が起きた時刻は午前8時頃で、これに合わせて慰霊式も行われます。死傷者の多さや、化学兵器が使われた無差別テロだったことなど、前例のない事件です。

Q:昨年はオウム真理教の幹部らへの死刑が執行されました。
A:先日、被害者の会の集まりがありましたが、多くの方は「死刑が執行されても、オウム真理教から名前を変えた教団『アレフ』などが活動する中、事件が終わったとは言えない」と話していました。また、霞ヶ関駅に勤務していた夫を亡くした高橋シズヱさんも「当事者にとって事件が風化することはありません」と話していました。

Q:これからの課題は、どういう点でしょうか。
A:被害者の高齢化も考える時期にきているのではないかと思います。被害を受けた6300人の方々の多くが通勤途中の会社員でした。24年たって、定年を迎えた人も増えています。ところが、猛毒のサリンが、高齢化していく中で健康にどういう影響を与えるのか、よく分かっていないこともあるそうです。

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NHKが2015年に、被害者の健康診断を続けているNPO法人「リカバリー・サポート・センター」の協力を得て行った被害者へのアンケートでは、目の不調を訴える人が
43%、頭痛が14%など、回答のあったおよそ半数が、今も体に何らかの影響が続いているということです。
事件の後、私が何度も取材させていただいた現在80代の男性、この方も当時50代で通勤途中に、事件に巻き込まれました。24年たってもずっと頭痛が続いていて、病院でもこれ以上は治らないと言われたそうです。

Q:支援はこれからも必要ですね。
A:被害者の健康診断はNPOがボランティアで行っています。より長期的なケアの充実に向けた支援を考える必要がありますし、被害者の症状を将来の記録として残すことも大切です。24年たって事件の後に生まれた若者が社会人になり、地下鉄で通勤するようになりました。

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事件を知らない若い世代へ、オウムを二度と生み出さないよう教訓をどう伝えていくか。これも今後の課題だと思います。

(清永 聡 解説委員)
 


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