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「イノシシに豚コレラワクチン 効果は?」(ここに注目!)

合瀬 宏毅  解説委員

感染が拡大する豚コレラですが、政府は感染を媒介するとみられる野生イノシシに対するワクチン投与を決め、そのための餌付けを昨日(18日)から始めました。合瀬宏毅(おおせひろき)解説委員です。

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Q. イノシシがエサを前に迷っているというイラストですか?

人があげたエサにうまく食いついてくれるか。これが、作戦成功の一つの鍵になっているからです。
 岐阜件や愛知県では、これまでに11の施設で豚コレラへの感染が確認されています。農家としては、ウイルスが入ってこないように、農場の管理に細心の注意を払っているのだが、その一方で、野外でイノシシの間に広がっている豚コレラを根絶してもらわないと、とても安心できません。
もちろんイノシシを捕まえて、駆除したりしているのですが、これだけでは追いつかない。そこで、国が始めるのが、野生イノシシに対するワクチン投与です。

Q. どうやって投与するのですか

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 豚であれば注射ができますが、イノシシではそうはいきません。そこで、トウモロコシを固めたエサの中に、ワクチンのカプセルを閉じ込め、それをイノシシに食べさせようというのです。
ワクチンを投与すれば、豚コレラに感染しなくなり、ウイルスはこの地域からいなくなるという作戦です。
国では昨日から、イノシシをおびき寄せるための餌付けを始め、来年春まで6回にわたって投与する予定です。

Q. この作戦、うまく行くのでしょうか?

野生生物に対するワクチン投与、ヨーロッパでは、すでに実績がありますが、日本では初めての経験です。山の地形も、エサの環境も違う日本で、本当にうまくいくのか、実際の所わかりません。
 このため、日本ではワクチンを投与したあとに、イノシシを捕獲して効き目があるのか、検証しながら、手探りで作戦を続けていくことになります。

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Q. 効き目があったとして、この作戦、どのくらいの間、続けるのか?

 ドイツの専門家によると、ウイルスを撲滅するにはうまくいって2~3年、長ければ10年ほどかかりそうだということです。いずれにしてもまずは、人間が与えたエサに慣れてもらわなければなりません。イノシシは用心深い動物だとされ、関係者はまさに、イラストのように息を潜めて注目していると思います。

(合瀬 宏毅 解説委員)


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