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「どうなる?ロシア疑惑モラー報告書」(ここに注目!) 2019年3月15日(金)

髙橋 祐介  解説委員

3年前のアメリカ大統領選挙にロシアが介入したとされる、いわゆるロシア疑惑をめぐり、捜査にあたってきたモラー特別検察官が、近く報告書をまとめ、司法省に提出する見込みです。髙橋解説委員です。

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Q1)
いよいよ疑惑の真相が明らかになる?
A1)
さぁどうでしょう。けさのイラストはクイズ番組をイメージしてみました。最初の回答者が真ん中に座るモラー特別検察官。質問はふたつありました。ひとつは、当時のトランプ陣営とロシアに“共謀”の関係があったかなかったか?もうひとつは、捜査を違法に阻む“司法妨害”があったかなかったか?こうした疑惑の核心部分は、すでに訴追されているトランプ氏の元側近らの裁判でも立証されていません。最大の焦点はトランプ大統領その人が疑惑に関与したかしなかったかです。

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Q2)
トランプ大統領はロシア疑惑そのものを繰り返し否定していますよね。
A2)
その通り。ですから“モラー報告書”が大統領の「関与あり」つまりクロの判断を示せば、野党・民主党のペロシ下院議長がすぐさまボタンを押して、大統領の“弾劾”という札をあげるかも知れません。

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反対に、大統領の「関与なし」つまりシロの判断を示せば、今度はトランプ大統領が「それ見たことか!」身の“潔白”が証明されたとする札を挙げ、みずからの再選に向けて、弾みをつけようとするでしょう。

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Q3)
では、注目の“モラー報告書”、シロ・クロどちらになりそう?
A3)
実は肩透かしのようですが、シロ・クロどちらでもないグレーの判断、つまり大統領による関与の有無には触れず、明確な結論がただちに出てこない、いわば“第3の可能性”もあるのです。
報告書の内容が、どこまで一般に明らかにされるのかも微妙です。バー司法長官は、提出された報告書の“概要”を議会に知らせる義務がありますが、民主党は捜査結果を“すべて”明らかにするよう求め、証人喚問や法廷闘争も辞さない構えです。
はたして“モラー報告書”は疑惑の全容解明にどこまで踏み込むか?トランプ政権の浮沈をかけた攻防が、いっそう激しさを増すことだけは、間違いないでしょう。

(髙橋 祐介 解説委員)


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