東京証券取引所などを傘下にもつ「日本取引所グループ」と、「東京商品取引所」が今月中にも経営統合することで基本合意し、日本で初めてとなる総合取引所が実現する見通しとなりました。櫻井解説委員です。
Q1 こちらは、日本取引所グループと東京商品取引所がお互いのメニューを持ち寄っているんでしょうか?
A1 そうなんです。総合取引所ができますと、日本取引所グループが扱っている株式と、東京商品取引所が扱っている貴金属や穀物などを、一つのところで売買できるようになります。実は世界的にみますと、大豆や金といったモノに投資する「商品先物取引」はこの10年あまりで3倍以上に拡大し、アメリカ・香港・シンガポールなど海外では株と商品を一緒に扱うのが主流となっています。一方、日本はその間、取引業者に対する取り締まり強化の影響もあり、3分の1程度にまで落ち込んでしまいました。そこで、国の規制改革推進会議の後押しで、関係者の協議がすすみ、総合取引所が誕生する見通しとなったんです。
A2 世界有数の日本取引所グループの信用力をもとに、海外にくらべ大きく見劣りする国内の商品先物市場に投資家を国内外から集めるのが目的です。システム投資を効率的にすすめることができる利点もあります。参加者が増えれば、おカネも、情報も集まり、日本経済の活性化につながりますし、商品価格を国内で決める力も出てきます。これは、輸入大国である日本には重要です。ただ今後に向けては大きな課題もあります。
A3 日本が扱っている貴金属や穀物といった商品市場の最近の出来高は、世界全体のおよそ240分の1と、すぐにも世界で戦えるレベルにはなりません。日本の商社なども、商品取引は海外市場を使っていて、こうした企業を呼び戻す努力が重要です。商品の種類を増やし、そのノウハウがある人材を育てる必要もあるでしょう。「総合取引所」構想、実は10年以上前に日本が「アジアの金融センター」となることを目指して政府が提唱したものの、実現せず、世界に取り残された形です。この遅れを取り戻し、日本市場の魅力を高めることができるかが、問われています。
(櫻井 玲子 解説委員)
この委員の記事一覧はこちら