東日本大震災から8年を迎えましたが、復興庁は残り2年で設置期限を迎えることから後継組織についての議論が始まっています。
Q)復興はまだ道半ばなのに復興庁はなぜあと2年なのですか。
A)設置のときから10年と決められていました。期限を設けることで復興を成し遂げる決意を示す意味もあったと思います。岩手と宮城の津波被災地についてはかさ上げや防潮提などインフラの復旧はほぼ完了する見通しが立ちました。一方、いまも広い範囲で帰還困難区域が残る福島は、11年目以降も廃炉や除染、住民帰還のための生活環境の整備など大きな事業の継続が必要なことが明らかです。政府は先週、新たな「復興の基本方針」を閣議決定し、復興庁の後継組織を設置することを明記しました。
Q)後継組織には何が求められるのでしょうか。
A)岩手・宮城については被災者の心身のケアや生活相談、産業振興などに引き続き取組む必要があります。福島についてはむしろこれからが復興の正念場で、11年目以降もこれまでと同等の組織・体制が求められます。ただ後継組織に求められるのは、そこにとどまりません。
Q)さらに何が求められるのですか?
A)復興庁はかつてない規模の復興事業をとりまとめてきた経験とノウハウを持っています。熊本地震や西日本豪雨など大災害が相次いでいますが、いまの復興庁は東日本大震災限定の組織です。ノウハウを引き継ぎ、またブラッシュアップして今後の災害に対応できる組織にすべきという意見があります。さらに踏み込んで「事前の防災・減災から復興まで」を一貫して担当し、長期的な視野で、いわば国の「防災リスクマネジメント」に責任を持つ組織にすべきという提言もあります。
政府には引き続き震災と原発事故からの復興に全力をあげることと、復興を完遂できる後継組織をつくることが求められる、これは言うまでもありません。あわせて、その経験を次に活かす組織のあり方についても議論を深める必要があると思います。
(松本 浩司 解説委員)
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