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「米韓大規模演習『打ち切り』で抑止力は?」 (ここに注目!)

津屋 尚  解説委員

イラスト解説・ここに注目です。
アメリカと韓国は、北朝鮮が強く反発してきた春の大規模合同軍事演習の
“打ち切り”を決めました。津屋解説委員です。

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Q:この決定、北朝鮮に対する抑止力に影響するんでしょうか?
A:そう思います。米韓の合同演習は去年から中止や縮小が続いてきましたが、
今回の決定は、最大30万人が参加した「フォール・イーグル」など春の定例大規模演習の枠組みそのものを廃止するというものです。かわりに、今週から規模を縮小した演習が行われていますが、同じレベルの対応能力を維持するのはかなり難しいと思います。

Q:打ち切りは北朝鮮との対話継続のためですよね?

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A:はい。アメリカ国防総省は、「米朝首脳会談のあと韓国側との協議の結果、“外交を後押し”するため打ち切りを決めた」と発表したんですが、トランプ大統領はこれとは食い違う主張を展開しています。演習の打ち切りは「予算を節約するため」で「首脳会談のずっと前から決めていた」とツイートしたんです。
今回の決定は、トランプ大統領の意向が強く働いたとみられますが、気になるのは、その大統領自身が在韓米軍の役割りと演習の目的をどこまで正しく理解しているのかという点です。

Q:どういうことでしょう?

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A:在韓米軍は「fight tonight=今夜すぐにでも戦える」がモットーです。緊急性が極めて高い軍隊との位置づけなんですが、現場の兵士は1年程度の周期で常に入れ替わってしまいます。定例の大規模演習がなくなると軍の練度や即応能力を維持するのは難しくなるということをトランプ大統領は理解していないのでは、との声が軍の関係者から出ています。
米朝会談が物別れに終わり、核とミサイルの脅威は何も変わっていません。
にもかかわらず、おカネがかかるからという理由で、北朝鮮が最も嫌がってきた軍事演習の打ち切りを決めたとすれば、「戦略なき決定」と言わざるを得ません。
トランプ大統領が「金食い虫」とみなす在韓米軍が今後どうなっていくのかも、
注目しなければならないと思います。     

(津屋 尚 解説委員)

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