Q)「イラスト解説ここに注目」も、藤井聡太七段について。高橋俊雄解説委員に聞く。
藤井七段、昇級は「ほかの棋士の結果しだい」ということは、自力では決められないのですね。
A)
順位戦には5つのクラスがあり、藤井七段が在籍する「C級1組」には39人の棋士がいますが、1つ上に進める「昇級のいす」は、2つしかありません。きょうの最終局を残して全勝は1人もおらず、藤井七段や、師匠の杉本昌隆八段など、4人が1敗で並んでいます。さらに、2敗の棋士のうちの1人にも、昇級の可能性が残されています。
きょうはそれぞれが別の棋士と一斉に対局します。藤井七段は、勝てば9勝1敗で今年度の対局を終え、この椅子に手をかける形になりますが、同じ1敗のほかの棋士も勝った場合、ここに座る順番は、藤井七段が最後ということになっているのです。
Q)勝って9勝1敗で並んだ場合、組内の順位が関係してくるんですね。
A)
そうなんです。順位戦では勝敗が同じ棋士の順位は、前の年度の成績に基づく組内の順位によって決まります。
藤井七段は去年、1つ下の組から上がってきたばかりなので、この順位が31位と、1敗の4人の中で最も低くなっています。このため仮に、自身を含む3人が勝った場合、ほかの2人が誰であれ、藤井七段はこの中で三番手ということになり、この椅子に座ることはできないのです。
また、きょうの対局に敗れて8勝2敗となった場合も、2敗の棋士のなかの順位が最も下になるので、昇級することはできません。
Q)師匠の杉本八段との同時昇級の可能性はどうでしょうか。
A)
藤井七段と杉本八段が勝って、1敗で並ぶほかの2人が敗れた場合に限って、師弟の同時昇級が実現します。4人の勝敗の結果がそれ以外の場合は、この椅子に座る2人の組み合わせは変わってきます。したがって、同時昇級の可能性は高いとは言えませんが、師弟関係にある棋士が順位戦の同じ組で同時に昇級を決めた例は32年前に1度あるだけで、実現すれば非常に珍しい記録となります。
この順位戦、最も上の「A級」で優勝すれば、名人戦の挑戦者となることができますが、昇級のチャンスは年に1度しかありません。今回、自力での昇級はかないませんが、藤井七段がいつ名人戦に登場するのかという点でも、将来にも関わってくる注目の対局と言えると思います。
(高橋 俊雄 解説委員)
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