アメリカのトランプ大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン委員長による2回目の首脳会談が、日本時間の今夜(27日)、ベトナムのハノイで行われます。会談の焦点について出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。
Q1、登山服姿のトランプ大統領とキム・ジョンウン委員長、山道にはたくさんの岩が転がっていますね。
A1、非核化のプロセスを山登りに例えてみました。一口に非核化といっても、様々な段階をクリアしていかねばなりません。核実験やミサイル発射の「凍結」、核施設や核物質がどこにあるかの「申告」。申告に基づいて国際機関が「査察」と「検証」をし、「廃棄」を確認して、ようやく「完全な非核化」が実現するのです。北朝鮮はおととしの秋以降、新たな核実験やミサイル発射を行っていませんので、最初の「凍結」はひとまずクリアした形になっています。
Q2、問題はさらにその先まで登ることができるかですね。
A2、次の段階の「申告」に進むことができるかどうかが最大の焦点です。しかしそうは簡単にはいきません。仮に北朝鮮が核施設などの申告に応じたとしても、それで全部なのか、隠しているものはないのか、という疑問が残ります。逆に北朝鮮とすれば、すべてを申告してしまうと手の内がわかってしまう。この先、交渉が決裂して再び緊張状態に陥った時に、アメリカに攻撃対象を教えてしまうことになります。「申告」をクリアするハードルはとても高いのです。
Q3、この大きな岩を乗り越えることができるのでしょうか?
A3、難しいと思います。ただこの2人、ここで失敗するわけにはいかないのです。トランプ大統領は、ロシア疑惑や民主党との対立を抱えています。来年に迫った大統領選挙を前にここで得点を上げておきたいところでしょう。キム・ジョンウン委員長も、交渉が決裂して再び軍事攻撃の脅威に晒される事態だけは何としても避けたいはずです。
Q4、ここで失敗すれば谷底に落ちてしまうかも知れないのですね。
A4、その通りです。私は、この岩をクリアするために、2人がかなり無理をしてハードルを下げてくるのではないかと見ています。互いにハードルを下げることで「会談は大成功」と成果を強調しようとしているのではないでしょうか。ただそれで本当に成功と言えるのか。会談の成果をきちんと見極める必要があると思います。
(出石 直 解説委員)
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