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「どう変わる?特別養子縁組」(ここに注目!)

清永 聡  解説委員

相次ぐ児童虐待の防止につなげようと、「特別養子縁組」の対象年齢を「原則6歳未満」から「原則15歳未満」に引き上げることなどを柱とする要綱案がこのほどまとまりました。養子の仕組みはどう変わるのでしょうか。

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Q:特別養子縁組というのはどういうものなんですか。

A:養子には特別養子縁組と普通の養子縁組があります。普通養子縁組だと、実の親との間で法律上の親子関係が続きます。一方、特別養子縁組の場合、実の親との親子関係をなくしてしまうところに最大の特徴があります。ただし、対象は「6歳未満」で多くは乳幼児のため、年間500件程度でした。

Q:今回「15歳未満」に引き上げられることが、どうして児童虐待の防止につながるのですか。

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A:千葉県で小学4年生の女の子が自宅で死亡し、両親が逮捕される事件がありましたが、特別養子縁組は実の親と、縁を切る、ということができます。加えて虐待などの場合、例外的に実の親の同意がなくても養子を認めることが可能です。ですから、年齢の引き上げによって、小中学生の救済も可能になるわけです。このほか、児童相談所の所長による裁判所への申し立てを可能にするなど、児童相談所のかかわりも強化しています。法制審議会は、来週予定されている総会で正式に要綱をまとめる方針で、法務省はいまの国会へ改正案の提出を目指しています。

Q:ほかにはどのような役割があるのでしょう。

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A:不慮の事故や災害で両親を亡くした子どももいます。「里親」として一時的に別の家庭に引き取られるケースも多いのですが、一緒に暮らす中で絆が深まり、養子縁組を希望する人もいるんです。年齢が引き上げられれば、親族以外の第三者が里親の場合、今後も里親のままか、それとも特別養子縁組か普通養子縁組か時間をかけて検討することも、可能になるわけです。

Q:選択肢が広がるわけですね。

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A:親を亡くした子どもにとって、悲しみを乗り越えて育ての親と家族になる、ということは重い判断です。年齢の引き上げで思春期の子どもも対象になりますから、本人への配慮もいっそう大切です。今回の見直しを通じて、新しい家族の出発を後押しできるよう、さらに充実した制度にしてほしいと思います。

(清永 聡 解説委員)


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