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「米INF条約離脱へ その先は?」(ここに注目!)

津屋 尚  解説委員

アメリカは今週末(2月2日)、INF・中距離核戦力全廃条約からの離脱をロシアに通告する見通しで、通告が行われれば、条約は半年後に効力を失うことになります。

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Q:このイラスト、「INF条約」が“足かせ”のようになってますね。
A:ところが、ロシアだけがその足かせを外し条約違反の新型ミサイルを開発していると、アメリカは怒っています。冷戦中、米ソが結んだこの2国間条約は、射程が500キロから5500キロの地上配備型の中距離ミサイルの保有や開発を禁じています。アメリカは、ロシアが違反するミサイルを廃棄しないなら、
今週末の土曜日(2日)に条約離脱の手続きに入ると警告しているんです。

Q:アメリカは条約から離脱することになりそうですか?
A:その可能性は極めて高いと思います。ロシアはミサイルの廃棄には応じないでしょうし、実はアメリカは、ロシアの違反を口実に、条約を抜けて自らも中距離ミサイルの開発を進めたいというのが本音なのです。

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Q:なぜですか?
A:最大の理由は、INF条約には縛られない中国です。中国は、米ロが条約に縛られている間に、中距離兵器を次々と開発して、今では世界最大の中距離ミサイル保有国です。すべてが核兵器ではありませんが、実に1900発のミサイルが、グアムや日本などを射程におさめています。ところがアメリカにはこれに相当する兵器がないと危機感を強めています。そこで、自国の安全保障の足かせになっているとみなすこの条約から脱しようとしているのだと思います。

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Q:条約が破棄されたら核軍縮は遠のいてしまうのでは?
A:その通りです。この問題では、ミサイルの増強を続けている中国への対応が最大の課題です。同盟国アメリカの戦力強化は、日本の安全保障に直結する問題ですが、アメリカが中国に対抗して抑止力を高めようとすることで、軍拡競争が再燃し、かえって情勢を不安定させてしまうおそれがあります。決して簡単ではありませんが、中国も巻き込んだ軍縮の新たな枠組みづくりが本来、目指すべき方向だと思います。

(津屋 尚 解説委員)

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