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「英国 合意なきEU離脱?」(ここに注目!)

二村 伸  解説委員

イギリスのEU・ヨーロッパ連合からの離脱の条件を定めた協定案の採決が、15日、イギリス議会で行われます。メイ首相は14日午後、議会で緊急の演説を行い、離脱協定案への支持を訴えましたが、与党内でも反対が根強く、現地のメディアは否決される公算が強いと伝えています。

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Q.メイ首相は苦しい立場に追い込まれそうですね。

議会採決をおよそ1か月延期して与党議員らの説得を続けましたが、いぜん100人あまりが反対しているといわれます。否決された場合、イギリス政府が代替案を提出する猶予期間は議会開会日の3日間だけで、その間にEUから大幅な譲歩を引き出すのは困難です。「合意なき離脱」が現実味を増しているという見方が現地では強まっています。EU残留派からは、国民投票のやり直しを求める声が強まっていますが、総選挙や再投票は手続きに時間がかかるため3月のEU離脱を先送りする必要があり、いずれの場合も混乱は避けられません。

Q.「合意なき離脱」になると何が起きるのでしょうか?

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イギリスとEUとの間で関税が復活し、自動車は10%の税金がかけられます。また、通関手続きによって物流が滞り、原材料の調達や製品の供給、販売などサプライチェーンに影響が出そうです。自動車メーカーのBMWは、混乱を避けるためにイギリスの主力工場での生産を離脱後1か月間停止すると発表しています。金融機関は、現在はEUのいずれかの国で認可を得ればどこでも営業できますが、離脱後イギリスの免許だけでは他の国で金融サービスを行うことはできなくなります。航空機の運航に関しては1年間現状を維持することになっているため突然フライトが中止になるような事態は避けられそうですが、さまざまな分野で混乱が予想されます。

Q.日本の企業も影響を受けそうですね。

イギリスには日本の企業がおよそ1000社進出しており、中でも自動車メーカーはEU諸国から部品を調達しているだけに影響は少なくありません。

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日系企業の中には統括機能をドイツやオランダ、ルクセンブルクなどに移転することを決めたところや、ホンダのように4月に自動車の生産を6日間停止するところもあります。一方で、合意なき離脱の「最悪の事態」への対応策を講じている日系企業は、イギリス国内でも3割に満たないという調査結果もあります。イギリスはどこへ向かうのか、離脱まで3か月を切っても先行きが見えないだけに最悪の事態を想定した冷静な対応が求められています。

(二村 伸 解説委員)

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