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「防衛費過去最大 にじむ対米配慮」(ここに注目!)

増田 剛  解説委員

政府は、先週末、来年度・2019年度予算案を決定し、防衛費は、過去最大となりました。増田解説委員に聞きます。

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Q1)
きょうは、クリスマスになぞらえたイラストですね。
A1)
はい。きょうは、クリスマス当日ですから、こういうテイストでいこうかと思います。
プレゼントにかたどっているのは、過去最大、5兆2574億円の防衛費です。第二次安倍政権発足以来、7年連続の増額となりました。

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Q2)
過去最大だけあって、大きな箱ですね。
A2)
はい。箱を大きくしている、つまり、防衛費を押し上げているのが、F35戦闘機やイージス・アショアといった、アメリカ製の高額な装備品です。そして、こうした装備の調達方法がFMSです。

Q3)
FMSと言いますと。
A3)
はい。FMSは、アメリカ政府を直接の窓口とする装備の調達方法で、日本としては、アメリカの最新の装備を導入できるメリットがあります。一方で、価格はアメリカ側が設定し、代金は日本側が前払い、というように、かなりアメリカに有利な契約方法なんです。
今回の防衛費で、FMSは7013億円。前の年度から、3000億円近く増えています。10年前と比べると10倍以上。
もちろん、厳しい安全保障環境に対応するため、高性能な装備が必要だということになると、アメリカ製に依存せざるを得ないという事情はあります。ただ、そうはいっても、一番喜んでいるのは、やはり、トランプ大統領かもしれません。

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Q4)
それは、アメリカ製の装備をたくさん買ってくれたから・・ですか。
A4)
その通り。トランプ大統領は、対日貿易赤字を問題視し、アメリカ製装備の購入拡大を求めてきました。
安倍総理は、アメリカ製装備の購入実績をアピールすることで、対日圧力をかわす狙いがあるのではないか。そういう見方が広がっているんです。このように今回の防衛予算は、対米配慮がにじみ出たものになりました。

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一方、トランプ政権では、マティス国防長官が、来月1日までに政権を去ることになりました。マティス長官は、日米同盟の重要性を理解する国際協調派とみられてきましたので、日本政府内では、「同盟関係に影響が出なければ良いが」という声が聞かれます。
年明け以降、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の行動が、安全保障の分野でも増えてくるかもしれません。

(増田 剛 解説委員)


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