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「辺野古土砂投入へ 対立は決定的に」(ここに注目!)

増田 剛  解説委員

沖縄のアメリカ軍普天間基地の名護市辺野古への移設工事をめぐり、政府は、きょう、埋め立て予定地への土砂の投入を始めます。
増田解説委員に聞きます。

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Q1)
増田さん、土砂の投入は、いつ頃から計画されていたんでしょうか。

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A1)
もともと、政府は、埋め立て予定地への土砂の投入を、ことしの夏、8月中旬に行う予定でした。
ところが、当時の沖縄県知事の翁長氏が急死し、9月の知事選挙では、普天間基地の辺野古移設に反対する玉城氏が当選。
政府は、この間、土砂の投入を見合わせ、先月1か月間は、沖縄県と、この問題をめぐる集中協議を行いました。しかし、双方の主張は平行線をたどりましたので、政府は、協議が終わったタイミングで、土砂の投入を通知したんです。

「沖縄県の言い分は、十分に聞いた。いくら協議しても、互いの主張は変わらないのだから、普天間基地の一日も早い返還のためには、移設工事を進めるしかない」。これが、政府の言い分です。

Q2)
ただ、沖縄県は、反発していますね。

A2)
はい。「政府は、そもそも、沖縄県と折り合いをつけるつもりはなかったのではないか」。「集中協議は、県の反対を押し切るためのアリバイ作りだったのか」。沖縄県からは、こうした怒りの声も聞かれます。
玉城知事は、上京して、きのう、菅官房長官や岩屋防衛大臣と面会。県民の反発が強まっている状況を直接、訴え、土砂投入を断念するよう求めました。しかし、政府は、辺野古への移設が唯一の解決策だとして、予定通り、きょう、土砂を投入する方針を示したんです。

Q3)
なぜ、政府は、ここまでかたくななんでしょうか。

A3)
「後戻りができなくなる状況を作りたいのではないか」。
沖縄県からは、こんな声が聞かれます。
一旦、土砂を投入すれば、原状回復は困難になります。
一度、埋め立てた海から土砂を取り除いて、もとの環境に戻すのは、不可能に近いんです。

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沖縄では、来年2月24日に普天間基地の辺野古移設の是非を問う県民投票が予定されています。政府は、「選挙の結果に法的拘束力はなく、移設計画に影響はない」としていますが、その一方で、「年内に土砂を投入することで、選挙まで間を置きたい」。「後戻りができない状況を作って、反対派の気勢をそぎたい」。
そんな思惑もうかがえます。
対立が決定的になる中で、今後、沖縄県とどのように向き合っていくのか。政府は、重い責任を負うことになります。

(増田 剛 解説委員)



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