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「"空母"に改修 専守防衛の範囲内?」(ここに注目!)

津屋 尚  解説委員

政府は、防衛計画の大綱を見直し、自衛隊最大の護衛艦いずもにステルス戦闘機を搭載する計画ですが、専守防衛に反するのではという批判も出ています。
津屋解説委員です。
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Q:こちらのイラスト、「専守防衛」というラインが随分伸びてますね。
A:そうですね。政府は「専守防衛」の範囲をかなり広げようとしています。
というのも、日本周辺では、中国空軍や中国海軍が、東シナ海に加え、太平洋でも活動するケースが日常化しています。広大な海域で中国側の動きを監視したり、緊急事態に対応したりするには、護衛艦「いずも」を洋上の拠点にして、そこから戦闘機を発進させられる体制が必要だというのが、政府の考え方なんです。
その「いずも」ですが、アメリカ軍などが持つ空母に形が似ていますが、載せられるのはヘリコプターだけです。そこで航空甲板を改修して、垂直に着艦できるステルス戦闘機F35Bを搭載できるようにする計画なんです。
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Q:そこで専守防衛をめぐる批判が出ているんですね。
A:政府はこれまで、 専守防衛の立場から「攻撃型空母」は保有しないと説明してきましたので、野党などからは、「これは攻撃型空母じゃないか」「専守防衛に反する」と批判が出ています。
これに対して政府は、「いずも」は、常に戦闘機を載せるのではなく、これまで通り対潜水艦作戦用のヘリコプターを載せるなど“複数の目的”に使うので、攻撃のみに特化した「攻撃型空母」ではない、過去の説明との齟齬(そご)もない、との立場です。
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Q:この議論、どのようにみますか?
A:過去の説明と齟齬があるかどうかも重要ですが、最も大事なのは、整備する防衛力の中身そのものです。アメリカのような本格的な空母には程遠いにせよ、洋上から戦闘機を発進させられるという、日本が保有してこなかった攻撃能力が加わることは確かです。政府が堅持するとしている「専守防衛」はどういうものなのか、その将来像も含めて、改めて国民にしっかり示す必要があると思います。
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(津屋 尚 解説委員)



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