NHK 解説委員室

これまでの解説記事

「外国人材受け入れ拡大、審議の行方は」(ここに注目!)

曽我 英弘  解説委員

外国人材の受け入れを拡大するための出入国管理法の改正案は、21日、衆議院法務委員会で審議に入ることになった。

C181121_0.jpg

Q)これまで委員会審議が始まらなかったのはなぜか。
A)審議の前提となる政府のデータに、公表の遅れや誤りがあったことが大きな要因。
与野党共通の疑問は、受け入れの分野や人数が明確でない点だったが、政府が公表したのは、2日に法案が国会に提出されてから2週間近く経ってから。
さらに、すでに日本にいる技能実習生に、失踪した理由などを聞き取った政府の調査に誤りがあることが、先週わかった。
法案の旗振り役の山下法務大臣にとってはもちろん、与党にも誤算だったはず。

C181121_2.jpg

Q)審議はどのように展開しそうなのか。
A)政府与党は、人手不足に対応するため今の国会での成立は譲れないとして、11月中に衆議院を通過させたいとしている。
一方で立憲民主党などは、外国人材の力を借りる事は必要だとしているが、新しい制度の前に、まずは、問題となっている技能実習生の待遇の実態を把握し、解決することが先決だとしている。
来年4月の制度開始を前提にした審議は「拙速」だと強く反対していく方針だ。

C181121_5.jpg

Q)国会の会期は確か12月10日。あまり時間はないが。
A)法案は、制度の大枠しか示しておらず、どのような技能があれば新たな在留資格を認めるのかといった詳しい中身は、法案成立後、政令などで示される見通し。
事実上国会のチェックなしに決まることになる。
また、外国人材の医療や日本語教育などを議論する必要もあるが、その場として法務委員会だけで十分なのかどうか、疑問視する見方もある。
NHKの11月の世論調査では、受け入れ拡大について意見が分かれ、今の国会での成立を「急ぐ必要はない」と答えた人はおよそ6割を占めた。
国会の会期延長の話もチラホラ聞こえるが、政府、与野党は、審議を通じて、法案の必要性や疑問点を丁寧に明らかにしてもらいたい。

(曽我 英弘 解説委員)


この委員の記事一覧はこちら

曽我 英弘  解説委員

キーワード

こちらもオススメ!