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「宇宙の荷物回収します!その狙いは?」(ここに注目!)

水野 倫之  解説委員

宇宙航空研究開発機構は、国際宇宙ステーションで作った実験試料を初めて地上に持ち帰る実験を今週行う。水野倫之解説委員の解説。

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これまで日本は実験試料はアメリカやロシアの輸送船に頼んで持ち帰ってもらっていた。
日本は輸送船こうのとりを運用するが、荷物を届けたあとは、大気圏で燃え尽きて廃棄され、持ちかえれなかった。
ただ無重力状態で作った実験試料は地上で詳細に分析する必要があり、
日本独自の回収技術の獲得を目指すことになったわけ。
回収の最大の課題は大気圏への再突入。

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何も制御しないと大気との摩擦で最大で10G 、表面温度は3000度と過酷な環境で、試料が壊れてしまうおそれも。
そこで今回、姿勢制御エンジンがついた小型のカプセルを開発してこうのとりに持たせ、
今週再突入実験。
カプセルをコントロールしてゆるやかな角度で大気圏に突入し、
ふんわりとやさしく飛行できるようにしたのが最大の特徴。

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そうすることで衝撃は半分以下の4Gに、温度も1000度低くなり、
今回持ち帰るたんぱく質の結晶のような繊細な試料でもこわれにくくなる。
こうしたふんわり飛行の技術は何も実験試料のためだけではなく将来の有人宇宙活動を見据えたもので、宇宙飛行士を衝撃から守る技術につながる。

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政府はアメリカを中心に2020年代にも国際協力で行われる可能性のある月面の有人探査への参加を検討する方針でやはり技術を持っていないと存在感を示すことができない。今回のカプセルをもとに有人宇宙船の基礎技術の開発を進め、
月面探査に役立てていきたいと宇宙機構は考えている。
そうした夢のある計画につなげることができるのか、
まずは回収実験がうまく行くかどうかに注目。

(水野 倫之 解説委員)

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