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「どうなる南シナ海の米中対立」(ここに注目!)

津屋 尚  解説委員

南シナ海をめぐって米中の対立が激しくなる中、東南アジア諸国の国防相による「ASEAN国防相会議」がシンガポールで始まり、日米中なども加わって議論が行われます。津屋解説委員です。

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Q1:今回の会議はどこに注目しますか。
A1:何といっても、アメリカのマティス国防長官と中国の魏鳳和(ぎ・ほうわ)国防相が直接意見を戦わせる、最終日(20日)の拡大会議です。米中はいま、「貿易戦争」とか「新たな冷戦」とか言われるような険悪なムードですが、これを反映するように、南シナ海での対立も先鋭化しています。南シナ海の人工島には、滑走路やレーダー施設が完成し、対空ミサイルも配置されるなど軍事拠点化がどんどん進んでいます。これに対しアメリカは最近、中国に対するけん制のギアを一段階、上げてきたように思います。

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Q2:どういうことですか。
A2:アメリカは先月に続き今週も、B52爆撃機に南シナ海上空を飛行させてたほか、イギリスやオーストラリアなどの同盟国も加わって人工島近くを航行する「航行の自由作戦」を強化して、中国の主張は絶対認めない姿勢を鮮明にしています。これに対して、先月末、中国海軍の駆逐艦が、アメリカ海軍のイージス駆逐艦に衝突ぎりぎりの極めて危険な距離まで異常接近しました。中国軍はこれまで、「航行の自由作戦」を監視するだけにとどめてきましたが、初めて海軍が挑発行為に踏み切った形です。

Q3:雲行きが怪しくなってきましたね。
A3:中国側がもし、強硬姿勢のギアを上げ、軍が現場で断固とした行動をとる方針に転じたのだとすれば、非常に由々しき事態です。それに心配なのは、軍同士が対峙するという点です。万一、軍の艦艇同士が接触した場合、互いに強力な武器を搭載しているだけに抑制が効かず、軍事衝突にエスカレートしてしまうおそれがあります。

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Q4:衝突だけは避けてもらいたいですね。
A4:今回の会議では、米中が互いの主張をぶつけ合う展開は避けられないでしょうが、最悪の事態を回避するためのより踏み込んだ提案がなされるのか、あるいは、緊張を高めるだけの結果になってしまうのか、よく注意して見なければならないと思います。

(津屋 尚 解説委員)


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