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「ひじ手術の大谷 復帰は?」(ここに注目!)

小澤 正修  解説委員

大リーグでも「二刀流」の活躍をみせたエンジェルスの大谷翔平選手。シーズンを終えて日本時間の2日、右ひじの手術を受けました。小澤正修解説委員です。

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Q。
この手術、難しいものだったのでしょうか?
A。
これは70年代に大リーグで初めてこの手術を行った左ピッチャーの名前をとって、「トミー・ジョン手術」と呼ばれています。全体の数ははっきりしていませんが、最近は日米ともに症例が増えているとされ、石井一久投手が在籍していた当時のドジャースの元トレーナーは「チームだけでも、3割程度は、この手術を経験していたと思う」と話しています。90%は完全に復帰できると言われていて、さきほどのトミー・ジョン投手は通算288勝のうち、実に半数以上を手術後にあげています。

Q。
1日も早い復帰を期待してしまいますが、どのくらいの時間がかかるのでしょうか?

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A。
個人差はありますが、一般的にピッチャーは1年から1年半、バッターだけなら半年程度での復帰が可能だとされています。二刀流の大谷選手は、まず、投げることのない指名打者として、来年の開幕から夏までの間の復帰を目指すことになります。また、左バッターはバットをリードする右腕より、押し込む左腕のほうがひじにかかる負担が大きいため、大谷選手が手術した右ひじには比較的、負担が少ないことも利点だと指摘されています。とはいえ、かつて、この手術を経験した元ヤクルトの荒木大輔さんは、リハビリでオーバーワークになってしまい、その結果、移植した腱が再び断裂して、復帰までおよそ4年もかかってしまいました。あせりは禁物です。

Q。
今後大切なことはなんでしょうか?

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A。
球団管理のもとで行うリハビリのペースを乱さないことだと思います。手術後、日常生活に支障が出なくなるまで3~4ヶ月。リハビリは、例えば輪ゴムを指にかけて動かしたり、1キロのダンベルを10回程度上げ下げしたりというような、非常に単調で負荷の小さなメニューから始まります。このため、「これで本当に復帰できるのか」という不安が、オーバーワークにつながってしまうこともあるというのです。周囲を含め、復帰に向けて、あせらないことが、まずは大切だと思います。

(小澤 正修 解説委員)


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