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「高校生平和大使 核廃絶の願いは」(ここに注目!)

増田 剛  解説委員

いわゆる高校生平和大使が、きょう、ジュネーブの国連軍縮部を訪問します。増田解説委員です。

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Q1)
増田さん、高校生平和大使、今年で21代目になるそうですね。
A1)
そうなんです。
この高校生平和大使、被爆地の声を世界に届けようと、長崎市の市民団体が中心になって派遣しているもので、全国の高校生から選ばれています。1998年から毎年、国連を訪問し、核兵器の廃絶と平和な世界の実現を訴えてきました。国連では、ヒロシマ・ナガサキ・ピース・メッセンジャーと呼ばれ、その真剣な活動が高い評価を得ていて、日本の外務大臣からも、感謝状が授与されています。

Q2)
全員、女子生徒なんですね。
A2)
はい。今年は、15の都道府県の20人の女子高校生が選ばれました。きょう、ジュネーブの国連軍縮部を訪ね、10万8476人分の署名を手渡します。
ただ、この時期に開かれている軍縮会議で、おととしまで高校生が行ってきたスピーチは、去年に続き、今年も行われません。

Q3)なぜですか。
A3)
去年、外務省は、理由として、軍縮会議は、基本的に政府間交渉の場であるとした上で、高校生のスピーチを問題視する国があり、強行するわけにはいかなくなったと説明しました。
それで、私、その経緯が気になりましたので、外務省に、当時の状況を記した内部文書の情報公開を請求しました。これです。
ある国の外交官が、「日本が軍縮会議で実施している高校生のスピーチを止めて頂けないか」「自分は、高校生に本会議場から出て行くよう求めることもできるし、そうすることも考えたが、無垢な高校生を困惑させることはしたくないので、思いとどまった経緯がある」などと申し入れてきたことが記されています。

Q4)
ある国って、どこでしょう。
A4)
外務省は、外交上の配慮から、明らかにできないとしています。
その結果、残念ながら、今年の軍縮会議については、高校生は、傍聴だけということになりました。一方で、日本政府が主催するレセプションでは、各国の外交官と意見交換を行うという貴重な体験ができましたし、その場でスピーチも行いました。

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ビリョクだけどムリョクじゃない。
これは、平和大使のキャッチフレーズなんですが、彼らの地道な活動は国際的にも高く評価されていますので、これからも、こうした努力を続けてほしいと切に思います。

(増田 剛 解説委員)


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