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「『核なき世界』への課題」(ここに注目!)

津屋 尚  解説委員

「イラスト解説ここに注目!」、原爆の日についてです。

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Q:核兵器をめぐる世界の現状をどうみたらいいでしょう?

A:現実は非常に厳しいといわざるを得ません。イラストに描かれているのは、核兵器を保有している主な国の指導者たちです。被爆地や世界からの切なる声には耳を貸そうとせず、「核廃絶」とは逆の方向に進もうとしています。世界にはまだ1万4000発以上の核兵器があるといわれていますが、特に、その9割以上を占めるアメリカとロシアは、再び核戦力を増強しようとしいて、軍拡競争が再燃しかねない状況です。

Q:数が増えているということですか?

A:数はそれほど変わっていないんですが、問題なのは核兵器の質的な変化です。トランプ政権は今年2月に発表した新たな核戦略で、いわば「使える核」を導入する方針を打ち出したんです。

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Q:「使える核」というのはどういうことですか?

A:アメリカの核兵器は、都市をまるごと破壊してしまう「戦略核」がほとんどですが、これだとあまりに破壊力が大き過ぎて、「簡単には使ってこれないだろう」とロシアなどに見透かされてしまうのではとトランプ政権は考えたんです。
そこで、核爆発の威力を抑えて小型化したもの、つまり「使える核兵器」を取りそろえれば相手の攻撃を抑止できるだろうと考えているんです。
しかし、この考えは、明らかに核軍縮に逆行するばかりか、核兵器が使われてしまう危険を高めるだけではないかと批判が沸き起こっています。

Q:核軍縮を進めるにはどうしたらいいのでしょう?

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A:そのためには、核軍縮に背を向けている保有国の政策を改めさせなければなりません。簡単なことではありませんが、核兵器に頼らなくても安全が保障される仕組みをつくるしかありません。去年採択された「核兵器禁止条約」は、核保有国などが反対していて実効性の面での課題はあるものの、核の廃絶を求める機運が世界に広がっていることは示したのは確かです。この機運をしっかりとつなぎとめながら、新たな仕組みを模索していくことが唯一の被爆国・日本の責任でもあると思います。

(津屋 尚 解説委員)

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