NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「栃木女児殺害 取り調べ映像の判断は」(ここに注目!)

清永 聡  解説委員

平成17年に栃木県の旧今市市、今の日光市で、小学1年生の女の子が連れ去られ、遺体で見つかった事件の2審判決が、3日に東京高等裁判所で言い渡されます。

C180803_0.jpg

Q:裁判では、どういう点が争われているのですか。

A:殺人などの罪に問われている勝又拓哉被告は裁判で無罪を主張しています。有力な物的証拠はありません。このため最大の争点は、捜査段階での「自白」が、信用できるかどうかという点でした。裁判員裁判で行われた1審の宇都宮地方裁判所は一昨年、無期懲役を言い渡しました。

Q:自白を信用できると判断したのですね。

A:ただ、1審では異例の審理が行われました。取り調べを録画した映像が、7時間以上にわたって法廷で上映されたのです。裁判員は、判決後の会見で「臨場感があり、映像がなければ判断が変わっていた」などと述べました。取り調べの映像が判決にも影響を与えていたことがうかがえます。

Q:映像の印象は強いですからね。

C180803_2.jpg

A:長時間、取り調べの映像を見せることで、裁判員に有罪の印象を与えたのではないかという指摘もあります。もう1つ注意が必要なことは、映像が取り調べの全部ではないということです。もし、高圧的な取り調べが行われていたとしても、編集でそこを取り除けば裁判員にはわかりません。弁護団は一部の可視化という不完全なシステムで、長時間の取り調べが行われた映像から切り出したことで、裁判員に誤った印象を与えたと主張しています。

Q:非常に難しいですね。

C180803_4.jpg

A:2審では、映像を使った1審の審理のありかたも問われることになります。
取り調べの録音や録画は、もともと日弁連・日本弁護士連合会などが不当な取り調べが行われないようにして、冤罪を防ぐために実施を求めていました。反対していたのは検察側でした。こうした当初の理念とは違って、映像を任意性の判断のために用いることは妥当なのか。東京高裁の判断によっては、今後の捜査の在り方にも影響を及ぼす可能性がある大きな課題を含んでいると思います。

(清永 聡 解説委員)

キーワード

関連記事