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「英EU離脱 混乱を懸念」(ここに注目!)

二村 伸  解説委員

イギリスのEUからの離脱まで8か月に迫りました。しかし、交渉の期限とされる今年10月までの合意は微妙な情勢で、離脱後の混乱への懸念も出始めています。

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Q.なぜ交渉が難航しているのですか?

EUには縛られたくないが、貿易はこれまで通りしたいというイギリスと、いいとこ取りは認めないというEUのせめぎあいとともに、イギリス国内の対立が交渉を難しくしています。離脱後もEUとの関係を重視する穏健派と、EUからの完全離脱を求める強硬派の溝は深く、国として共同歩調をとることができない状態です。貿易分野でEUの規制を受け入れる方針を示したメイ首相に強硬派は強く反発し、国民に人気のあるジョンソン外相とデービス離脱担当相が相次いで辞任するなどメイ首相の求心力は大きく低下しました。

Q.それに対してEUはどう対処するのでしょうか?

EUの執行機関であるヨーロッパ委員会は先週、このままでは来年3月29日に、離脱の条件や将来の関係に関する協定への合意がないままイギリスがEUを出ることになる可能性があるとして、各国政府や域内の企業に最悪の事態に備えるよう要請しました。「無秩序の離脱」という最悪のシナリオが絵空事ではなくなってきたのです。合意なしにEU離脱となると、イギリスとEUの国境で税関手続きや検疫が復活して流通や輸送が混乱し、企業や経済活動に大きな支障が出かねません。そうなるとイギリスとEUだけでなく、EU域内で活動する日本の企業にとっても影響は避けられません。イギリス政府は20日、交渉の指針となる「白書」を発表し、国境の検査の省略などを提案しましたが、EU側はまだ問題が多いと慎重です。さらにメイ首相、EU双方にとってもう一つ頭の痛い問題があります。

Q.何でしょうか?

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アメリカとの関係です。トランプ大統領は、イギリスの離脱強硬派をあからさまに応援し、EUに対しては「貿易では敵だ」と述べるなど同盟国とは思えない発言を繰り返しています。鉄鋼とアルミニウムの輸入制限の発動に加えて、EUからの自動車に20%の関税をかけると脅し、EU側も報復措置を警告するなど通商摩擦が激しさを増しています。25日にはヨーロッパ委員会のユンケル委員長がトランプ大統領と会談する予定ですが、イギリスとの離脱交渉とともに、アメリカとの貿易戦争回避のための戦いをEUは強いられ、その行方は日本にも影響を及ぼしかねません。

(二村 伸 解説委員)

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